『国宝』との興収差を超えて。同時期に公開された吉沢亮の “もう一つの主演作”を今こそ見るべきワケ
吸血鬼映画の歴史を更新
吉沢演じる主人公のバンパイアはあの織田信長の小姓だった森蘭丸という設定で、450歳になって令和の日本、それも老舗の銭湯で住み込みで働いている。 彼もまた『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の吸血鬼たち同様に特定の血を欲しているのだが、それが「18歳童貞」の新鮮な血という設定がありそうでなかった。 古今東西には多種多様な吸血鬼がいる。『ババンババンバンバンパイア』と似た設定なら、傑作珍品(?)吸血鬼映画『処女の生血』(1974年)のドラキュラはタイトルの通り、処女の血しか吸わない。 あるいは、ベネズエラにはなんと美少年の精液しか吸わない吸血鬼までいるらしい。そこに18歳童貞という新機軸。原作には「髪を染めたり、ピアスをしたりするだけでも味は大きく落ちる」と細かな設定まである。吸血鬼ファンには歓喜のアイデアではないだろうか。 それを吉沢亮がコミカルに演じまくり、エキセントリックな全裸場面まで随所に配置されている。 最強の兄バンパイア・森長可(眞栄田郷敦)との対決を終えた、日の入りの屋上場面で見せる吉沢の美しい横顔も見せ場だったが、これは『国宝』の顔のアップと相似形を成している。というか、兄弟作だったのか? と、思ってみたり。 素晴らしいアイデアに溢れた原作の実写化によって、吉沢亮は吸血鬼映画の歴史をも更新していたのだ。俳優としての吉沢はこの先、映画という名の血だけを吸って生きられるだけの栄養分(栄冠)を手にしたのではないだろうか? <文/加賀谷健>
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