幼少期からずっと、母親からも父親からも蔑ろにされてきたニジコ。トラウマは根深く、毎日うっすらと笑いながら、どうしようもなく死にたくなる。こんな自分が母親でいていいのか、子供達が可愛くてたまらないからこそ、ニジコは悩んでしまいます。
子供達が学校でいざこざに巻き込まれれば、ニジコは吐くほど考え、解決策を見出そうともがきます。子供達には自分のようになってほしくない、誰からも不必要とされてほしくない。ニジコの愛情ややさしさは、悲しみや孤独から生まれているのだと、読みながら涙がにじんでしまうのです。
楽観的な夫・タイヨウが「考えすぎだよ」とニジコを励ましますが、「人づきあいうまいからわからないんだよ‼」と突っぱねてしまい、自己嫌悪に陥ることも。死にたい願望を持ち続けるニジコに寄り添う夫にすら、反発してしまう。心の奥底では夫に感謝しているからこそ、つらいのです。
死にたいけれど、死にたくない。もし私が死んだら、夫も子供達もきっと悲しむから。悲しんでほしいから。私がこの世界に存在していいと、許容してくれるのは家族だけ。
そうです、ニジコが自ら作り上げた、家族なのです。それだけは、決して手放してはならない。唯一の生きる希望を守るために、ニジコは日課を決めました。
ニジコは今日も、<本日の美しいもの>を集めます。<死にたがりやの私が見る世界はこんなにも美しくて、この世界にまだいたいと思わせてくれる……>ニジコは死と対極にある、細やかな美しいもの、その美しさを発見できる自分の尊さを、生きる糧にしているのです。
<毎日をがんばって生きている人の「死にたい」という思いは、きっと美しい形をしている>
最後に綴られたこの言葉に、私も、死にたいと思うのは罪ではない、と救われた気持ちになりました。だからこそ、きっしーはお花の形をしているのです。
死にたいからこそ、生きている。本書のメッセージに、あなたも涙するのではないでしょうか。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
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