
「体から離れてね」「心臓マッサージしてみよう」など、トイこころから発せられる音声を聞きながら遊ぶ
AEDによって、いわゆる「電気ショック」での応急処置が一般にも解放されたのは2004年7月でした。そこから20年以上が経ち、日本国内での現在の設置数は約67万台といわれます。学校やショッピングモールなどでみかけるようになった一方、その正しい扱い方などの「認知をより広めたい」と、坂野さんは意欲を示します。
「いまだに『LEDですか?』と聞いてくる方もいますし、電気ショックを扱う医療機器なので『怖い』という方もいます。実際に倒れた人を前にして使おうとしても『音声ガイドが流れると知らず、パニックになってしまった』という経験者の方もいました。
一般への解放から20年以上が経ち、設置台数が約67万台に達しても『人の知識が追いついていない』のが、社会的な課題だと思うんです。AEDの講習会などを開催している事例もありますが、集まっているのは『知りたい』と考える人たちなので、興味のある方の知識が高まっている一方、興味のない方々は構造として置いていかれてしまう。
僕らが今やっているのは興味から学びにつなげる『AEDに対する認知サイクル』を作ることです。近い将来『トイこころ』でAEDを知った子たちが大人になって、さらに、下の世代へ広めてくれるような社会になるのが理想です」
10年先、20年先に「誰かを助ける大人」になってくれたら

AEDの認知を広めるためのペーパークラフト、おもちゃの先には「絵本」の構想も。
「子ども向けの製品をきっかけとして『この機械は何をするためのモノなんだろう?』と興味を持ってくれるなら」と、坂野さんは語ります。そして、そう思い描く背景には「学び」への熱意もありました。
「何かを学ぶ究極形は『自分から学ぶこと』だと思うんです。僕が広めたいAEDへの認知も例外ではなく『学びたい』と思う人たちを増やすのが、近道だと思って活動しています。『トイこころ』で遊んだ子たちが10年先、20年先で『誰かを助ける大人』になってくれるのならうれしいし、僕らのたどり着きたいゴールです。今日明日で実現できるものでありませんし、どれほど長い道のりであっても、一歩一歩を着実に踏んでいきたいと覚悟しています」
<取材・文/カネコシュウヘイ>