「少し怖く感じた私は『とにかく、早く食べ終わってお店を出よう』と決め、コショウに手を伸ばすと、おじさんもニヤニヤと同時に手を伸ばしてきて、手を触られて鳥肌が立ってしまったんですよね」

偶然とは思えないタイミング。避ける間もなく触れた指先に、ゾワッとした嫌悪感が走りました。
その瞬間、菜月さんは「無理だ。ほとんど食べてないけど、もう出よう……」と心の中でため息をついたそう。
「そして椅子を引いて立ち上がろうとしたその時『ちょっと、何やってんのよあんた!』と低く、よく通る声が店内に響いたんですよ」
空気が一変しました。
顔を上げると、厨房から現れたのは割烹着姿の女将さん。年配ながら背筋がピンと伸び、その一言だけで場を制するような迫力があります。
「その後ろにはさっきの若い男性店員さんがついてきて、私の方を見てぺこぺこ頭を下げていたので『あ、彼が呼んできてくれたんだな』と分かりましたね」
女将さんは一直線におじさんの前まで歩み寄ると、間髪入れず「そこ、勝手に座らないでよ」と言い放ちました。