その時です。前の座席に座っていた小学校低学年くらいの女の子が、ぴょこんと立ち上がりました。小さな体で一歩前に出ると、迷いのない足取りで女性の方へ近づいていきます。

じーっと女性の手元を見つめながら「ねえ、それ、マックのポテトでしょ?」と、まっすぐな声で話しかけました。
「おばさんが不思議そうに『そうだけど……』と答えると、女の子は、ぱあっと顔を明るくして『私も大好き! その匂い、みんなお腹すいちゃうね』と遠慮のない言い方で、ただ好きが溢れている感じが伝わってきましたね」
無邪気でまっすぐで、少しも悪気のない言葉。その笑顔に、女性の表情もふっとゆるみました。
女の子はさらに一歩近づき、少し首をかしげながら「でもここだと、ゆっくり食べられないし、持って帰って匂いも全部独り占めした方がいいよ。もったいない」と優しく続けたそう。
その言い方は、まるで「もっといい楽しみ方があるよ」と教えてくれているような響きでした。
「その言い方がまた絶妙で。注意でも否定でもなく……上手いこと言うなと感心してしまって。私はおばさんがこの後どうするのかに目が釘付けになってしまったんですよ」
女性は一瞬だけ周りを見回します。さっきまで気にしていなかった視線の存在に、ようやく気づいたようでした。そして自分の手元のポテトを見て、少しだけ照れたように苦笑いを浮かべたそう。