
「今日、不審者に触られた」
その言葉に、郁恵さんは息をのみます。
「ここのところ、本当に不審者情報が多くて。娘に何かあったらどうしようかとは思っていました。そんな矢先、娘の口から “不審者”という言葉が出てきたので、驚きましたよ」
少しうつむきながら、そして目を真っ赤にさせて娘は話を続けます。
「1丁目の横断歩道でね、もう少しで渡れるかなってときに転びそうになったの。そしたら、急に走ってきたおじいさんが、私のランドセルをぎゅっとつかんできたの」

※AI生成画像を使用しています。
まだ少し潤んだ目で、郁恵さんをまっすぐに見つめ、声を震わせながら話す娘。
「私のランドセルをぎゅっとつかんだおじいさんね、その後に大声で「危ないよ!」って言ってきて。怖くて逃げてきちゃった」
娘の話に違和感を抱きつつも、怖がっている娘の言葉を遮ることなく郁恵さんは聞いたそうです。

郁恵さんが娘の話を聞き終え、どうやって声を掛けていいものか考えていたとき、郁恵さんのスマホが鳴ります。
「小学校からでした。娘の担任の先生から、今日のことでご報告したいと。娘がランドセルを触られて泣いたとき、そばにいた娘の友達が家に帰って親に伝えたそうなんです。その子の親御さんが学校に連絡をしたそうで……」
先生の話によると、少し圧が強めの高齢の男性が最近よく小学生に話しかけてくるんだそう。今年に入って、すでに数人から学校へ被害の連絡が入っている。学校としても重く受け止めており、今回の件も“声かけ事案”として一斉連絡を出す予定だということでした。
「家でも、知らない人に話しかけられたらついて行かないよ、逃げるんだよと教えています。ただね、今回の娘の件は、転びそうになったのを助けてもらっただけ。娘は驚いて泣いたけど、相手は不審者ではないですよね……?」