一方で、同年4月にW主演した『恋は闇』(日本テレビ系)では真逆の魅力を放ちます。柔らかな印象を逆手に取り、連続殺人の疑いがかかる青年として、笑っているのに何を考えているか分からない、近づきたいのに触れられない色気と危うさを表現していました。そんな彼にも、守るべきもののために信念を貫く強い意思が通っていたのです。

画像:「恋は闇」日本テレビ公式サイトより
そして特筆すべきは、GP帯初単独主演となった4月期ドラマ『10回切って倒れない木はない』で見せた進化です。純愛の中にも波乱万丈が描かれる同作において、志尊さんは、清潔感や誠実さだけでなく、焦燥、矛盾、執着といった人間の負の側面までをも生々しく体現。
愛する女性を前にしながら抗えない運命に屈する主人公として、自らを追い詰めた結果、目だけが笑っていない生気を失った表情を見せ、人が脆く壊れていくリアルさをまざまざと感じさせました。物語を単に明るく照らすのではなく、複雑な濁りを与えられる俳優へと進化し、主演として一段上のステージに上がったように思います。
そしてこの夏、彼は大ヒットシリーズの最新作『キングダム 魂の決戦』で、人気キャラクター・蒙恬(もうてん)を演じます。頭脳明晰で柔らかい物腰ながら、その裏に武骨さを隠し持つ蒙恬は、今の志尊さんが持つ品のある華と内なる深みを存分に発揮できる役どころでしょう。
『キングダム』で描かれるのは、決して「倒れない人」ではなく、「倒れてもなお、泥を啜ってでも進む人」。志尊さんの人生にも重なります。
命の危機に瀕したあの日から、一歩ずつ自らの足で歩みを進めてきた志尊さん。彼の演技に強く惹きつけられるのは、演じる役の向こう側に、一人の人間として血の通った「生への執着」が感じ取れるから。その深みを知った私たちは、これから彼が演じるどんな役の中にも、自分たちの弱さや希望を重ねずにはいられないでしょう。
<文/こじらぶ>
こじらぶ
ライター・コラムニスト。上智大学大学院外国語学研究科修了・言語学修士。ドラマ、男性&女性アイドル、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X:
@kojirabu0419