――柏木はたびたび「あなたは本当に結婚したいのですか」と問いかけます。この言葉には、どんな思いを込めていますか?
井原:本当に伝えたいのは、「その目的を叶える覚悟がありますか」ということなんです。

『運命など存在しないので』1巻 第1話より
何かを本気で叶えたいのであれば、ときには耳の痛い現実とも向き合わなければいけない。そのうえで、自分に必要な行動を選ぶ覚悟があるのかを問いかけています。
だから、このセリフは婚活だけの話ではありません。就職や転職など、人生には「本当にそれを望むなら、行動も変えなければならない」場面がたくさんあります。その意味では、多くの人に当てはまる問いだと思っています。
――柏木は「運命の人」や「ガチャ」という言葉を嫌っています。この考え方には、先生ご自身の思いも反映されているのでしょうか。
井原:かなり反映されています。柏木が嫌っているのは、「運命」や「ガチャ」という言葉そのものではありません。それらを理由に思考停止してしまうことなんです。

『運命など存在しないので』2巻 第10話より
「運命の人じゃなかった」「ガチャが外れた」と考えてしまえば、自分の選択や行動を振り返らなくても済みます。そうやって現実から目を背ける姿勢に対して、「本当にそれでいいのか」と問いかけているキャラクターなんです。
――作品タイトル『運命など存在しないので』にも、その考え方が表れています。
井原:タイトルだけを見ると、「運命の人なんていないんだから諦めて婚活しなさい」という、冷たいメッセージだと受け取られることもあります(笑)。でも、そういう意味ではありません。

『運命など存在しないので』2巻 第8話より
「運命」という言葉を理由に、本来なら自分で変えられることまで諦めてしまわないでほしい。そんな思いを込めています。運命を否定したいわけではなく、「自分で考え、自分で選ぶことから逃げないでほしい」。それが、このタイトルに込めたメッセージです。
<取材・文/新庄圭>
新庄圭
しんじょう・けい/フリーランス編集者・ライター。アニメ雑誌やアニメ関連ムックを中心に編集・ライティングを担当。作品や作り手の魅力をわかりやすく伝える記事づくりを心掛けている。