更新日:2026.08.26 09:57
Lifestyle

「歯磨きで虫歯は防げない」歯科医が断言。毎日の歯磨きを台無しにする“食習慣の落とし穴”

マウスウォッシュよりも「正しいブラッシング」

――虫歯予防は「食事のタイミングや食べ方」で、歯周病予防は「歯磨きで」ということですね。 前岡:はい。それぞれ対策が異なります。ただ、歯周病対策については「歯磨き」という言葉自体が抽象的なため、自己流の“歯磨きっぽい動作”で終わってしまっている方が大半です。実際に正しく磨けている人は1〜2割程度しかいないのが現状で、だからこそ歯周病になる人が減らないのだと思います。 正しい歯磨きについて解説すると長くなるので、詳しくは私の本YouTube動画などで学んでいただければと思います。歯と歯の間のプラークは歯間ブラシかデンタルフロス、歯の表面や裏面は歯ブラシで落とす形になりますが、「どのようにブラシが歯に当たるとプラークが落ちるのか」を理解することが最重要です。 歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス――ちなみに、うがいや殺菌系のマウスウォッシュは虫歯予防に効果がありますか? 前岡:うがいによる虫歯予防効果は、ほぼゼロと言っていいくらいです。歯の表面にくっついたプラーク(細菌の塊)は、歯ブラシなどで物理的にこすり落とさなければ取れません。水やマウスウォッシュでゆすぐだけでは落ちないんです。 仮に殺菌系のマウスウォッシュで口内の細菌が一時的に減ったとしても、細菌は時間とともに倍々で繁殖するため、数時間も経てば元の数に戻ってしまいます。もしうがいやマウスウォッシュだけで根本的な効果があるなら、歯科医院のうがい用コップにもマウスウォッシュなどの殺菌液が出てくるはずですが、そんな光景は見かけませんよね? つまり一般的なマウスウォッシュだけで虫歯を予防することは難しいということなのです。 ――たしかに、そうですね。普段使う「歯磨き粉」についてはどう捉えればよいでしょうか。 前岡:世の中にはいろんな機能をうたった歯磨き粉がありますが、歯磨き粉の中で虫歯予防効果が認められている成分は「フッ素」です。おすすめの使い方としては、フッ素配合のジェルを少量使い、何もつけずにしっかりブラッシングした後の仕上げとして、歯の表面に軽く塗布するのが効果的です。 「泡立つ歯磨き粉をたっぷりつけないと磨いた気がしない」という感覚は、長年のCMなどによるイメージの刷り込みが大きいと思います。

親が見せる生活習慣が、子どもの虫歯予防の第一歩

――子どもの虫歯対策の一つとして、親から子へ虫歯菌がうつるのを恐れて、食器やスプーンを厳重に分けるご家庭もあるかと思います。 前岡:口の中に細菌が存在すること自体は、人間の体として正常な状態です。腸内細菌と同じように、生きていく中で自然とお口に入ってくるものなんですね。ですから、食事中に神経質になりすぎる必要はありません。虫歯菌がうつることを気にして、食器を分けることは必要な対策ではないのです。それよりも、親子で食事中の会話やスキンシップを楽しんでほしいと思います。 食事する子どもと母親繰り返しになりますが、大切なのは「菌を排除すること」ではなく、菌が増殖して悪さをしないような「家庭の生活環境や食習慣」を作ることです。 もし親御さんが「子どもの虫歯を防ぎたい」と本気で願うなら、食器を神経質に分ける前に、まず親御さんご自身の口内環境をきれいに整えて清潔に保つことが先決です。そして何より、正しい食生活や丁寧な歯磨きをする姿勢を、親御さん自身が日常の中で実践して見せてあげてください。子どもは親の姿を常に観察しているので、自然と真似をして育っていきます。 虫歯に怯えるよりも、規則正しい食生活を送り、正しく歯をケアする背中を見せていくこと。それこそが、親から子どもへ贈ることができる最初の虫歯予防になります。 【前回記事】⇒「ほぼ砂糖の塊です」熱中症対策のつもりが、虫歯の原因に? 夏の外出“定番アイテム”に歯科医が警鐘前岡遼馬(まえおかりょうま)】 前岡歯科医院院長。北海道大学歯学部卒。室蘭市の日鋼記念病院歯科口腔外科にて研修後、様々な事情から2014年に実家のある愛知県一宮市に戻り、父の医院を引き継いで最年少で開業。歯科衛生士が在籍しない医院として院長がすべての治療と説明を行う、ワンオペ医院として経営を続けている。著書に、『もう二度と歯医者の治療がいらなくなる3つの習慣 歯を失わないための本気の予防法』。 <取材・文/大夏えい>
大夏えい
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作中。
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ