
『満員電車で下敷きになりました』(幻冬舎)
――実際に民事調停はどうだったんですか?
ゆにこ:鉄道会社は、とても鉄壁だということが徐々にわかりました。病院では「バスだったら良かったのに」って言われましたが、鉄道事故の判例は、多くの乗客が死亡した大きなケース以外出てこないんです。私のような事故はそれなりに起きてるはずなのに、泣き寝入りしてるのが2〜3例あるだけ。言い換えると、ほとんどは声すらあげていないのではないでしょうか。
裁判は訴えるだけだけど、民事調停は話し合える場だということで、相談できる弁護士さんも見つかったこともあり、そこに望みをかけました。
当初、調停に素人の私は、駅員さんには教育研修を受けてほしいとか、車内の危険を周知するポスターを掲示してほしいとか、具体的なTO DOリストを作っていました。でも、弁護士の先生から止められました。「やっておきます」と言われて終わってしまうと。向こうから何かを提示してくる聞き方をしないといけないそうです。
――何年もかかる民事調停ができたモチベーションは何だったんですか?
ゆにこ:それがモチベーションがなかったから、多分続いたんだと思うんです。民事調停って何だろうっていう興味と、離婚している人たちから離婚調停の話を聞いてたこともあって、調停員が入れ替わり立ち替わり入る場に行ってみたかったんです。あと弁護士先生と話すというのも興味がありましたね。やり始めてからも好奇心だけでズルズル続けていった感じです。
話し合えば分かり合えると思っていたのに……鉄道会社との民事調停は不成立に
――民事調停はどういう展開になっていったんですか?
ゆにこ:民事調停も、なかなかどういう落としどころがいいのかわからないまま、最後まで主張が食い違い、不成立で終わってしまいました。
調停が終わってしまった時は「話合ったらわかり合える」と信じていただけに、虚しさに襲われて落ち込みもしましたが、「いいもん、私には漫画があるもん」「伝えるべき相手には伝えた」「今度は乗客の側から意識を変えてボトムアップだ」と開き直ってはいたんですね。でもいざ本が出来上がってきたら、「この本が売れなかったら、本当に終わってしまうんだ」と思ったら、夜中に初めて涙が出てきました。
今も泣きそうなんですけど、10年ズルズルやってきたことがとうとう終わる。これが最後のチャンスだと思うと怖いです。入院中は電話ひとつするのも大変ですごく忙しいから、流れるままにやってきたから、悲しいとか悔しいといった感情に蓋をしていたんでしょうね。多分、痛みの感情も今出てきたようで、涙がこみあげてくる自分に自分でもビックリしました。
この1冊目の漫画が売れたら、続きもあるかもしれませんが……まずは、駅員さん任せにはできない現実があって、安全はみんなでつくっていくもの、ということを一人でも多くの方に知ってもらえたらと思います。
<取材・文・撮影/谷亜ヒロコ>