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慰謝料に養育費…夫婦最後のシビアな約束【シングルマザー、家を買う/第2章】

【シングルマザー、家を買う/第2章】 バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。 ⇒【第1章:旦那の浮気に悩み、あやしい電話占いにハマッた私】
http://joshi-spa.jp/174356
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離婚に向けて、慰謝料や養育費を書類にする

 離婚を決意したのは、突然の出来事。  朝、起きた瞬間にふと憑き物が落ちたかのようにふっと体が楽になったのだ。その瞬間、言葉にしたのが「もう、いいか」と言う5文字。  きっと、吹っ切れたんだろう。電話占いもしたし、泣くだけ泣いたし、宗教にも誘われた(もちろん冷静に断ったけど)。さらに都合のいいときだけいると信じる神様は、きっと平等だと信じて、生まれて初めて1万円分も宝くじを買ってみたり(もちろん全部ハズれた)、願掛けでずっとのばしていた長い髪をばっさり切ってショートカットにしてみたりと、迷走に次ぐ迷走をして、もうやりつくしたのだ。  もちろん、子供のことは不安だった。私一人で育てられるだろうか。でも、なんだか、大丈夫な気もしたのだ。これは軽く考えているわけでなく、1年の別居の間に、自然と付いた自信だろう。  きっと、私にはこの1年が必要だったのだ。気持ちを整理しながら、もがく1年。  そして、この日から、離婚に向けての“離活”が始まった。 公証人役場 まず、最初に行ったのは公正証書の作成だ。離婚する前に、養育費や慰謝料、親権などの本当に大切なことを法的な書類に残すこの作業が、本当に大変だった。  公証役場の公証人である男性、というより、おじさん…いや、おじいちゃん。いや、もうひいおじいちゃんクラスのこの人がかなりクセモノだったのだ。  元旦那と決めた書類を公証役場に持っていくと、このおじいちゃんはかすれ声で対応してくれた。まず、かすれすぎて声が聞こえないのだ。どうして誰もこの人にこのかすれ声を指摘してあげないのだろう。しかも小声なのだ。大事なことを決める場所なのに、小声って! この場所でなんど繰り返しおじいちゃんの声を聴き返したかわからない。  ちょっとその状況が面白くなっていつもよりコミカルに「えぇ??」って聞き返したときにおじいちゃんがキレそうになり、鋭い目つきでにらんだときは本当にごめんなさいと心から謝った。心の中で。そうだ、ここはふざけちゃいけない場所だった。 公証人

「慰謝料分割なんて、甘くない?」

 そんなおじいちゃんが私たちの決め事を書いた紙切れを20分くらいかけて読んで、このときばかりは透明感あふれる声で言い放った。  「この条件、甘くない?」  耳を疑った。たしかに直接的な離婚原因は元旦那の方にあり、慰謝料と養育費をもらえるのは私のほうなのだが、元旦那に手持ちの金額がないため、向こう20年間の分割ということにしているのだ。それも、私にしたらだいぶしっかり徴収しているほうだと思うのだが、このおじいちゃんいわく、「慰謝料分割ってどんだけ優しいの。借金しても払わせなさいよ。これじゃ、相手の生活に支障でないじゃん」とぴしゃりと言い放ったのだ。  鬼だ。このおじいちゃん、人畜無害な顔して、言うこと鬼だ。  そこでうろたえている私を見て、「養育費なんてね。踏み倒す人のほうが多いんだから、一括がいいのにねぇ」とポツリ。たしかに、そりゃそうだ。でも、そんなまとまった金額持った庶民なんているのだろうか。きっと、このおじいちゃんはお金持ちばっかり相手してきたのだろう。そうだ、このおじいちゃんはきっと弁護士の天下りの公証人。お金の感覚が麻痺しているに違いない!(完全に貧乏人の偏見)  そこでおじいちゃんがたたみ掛けて聞いてきたのが元旦那の年収。「500万くらいです」と答えた瞬間、被り気味で「じゃぁダメだな」とバッサリ。それからは何も言わずに「20年間分割」という条件で書面にしてくれた。  私のことじゃないのに、なんだか、すごく切なくなった。 ⇒【後編】「久々に会った旦那に、公証人がビシッと言ったこと」に続く http://joshi-spa.jp/176784 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky) ※次回更新は1月7日を予定しています。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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