ネット選挙で誰が得するのか?影のキーマンに聞く【後編】

 2013年7月の参議院選挙から解禁される「ネット選挙」。といっても、もちろんネットで投票できるわけではなく、煎じ詰めれば、選挙期間中(公示日~投票日)にHPの更新・SNSへの投稿・メルマガ配信等ができるようになる「ネット選挙運動の解禁」です。

 それだけのことなのに騒ぎすぎじゃないの?誰にとって得になるの?という疑問を、「VoiceJapan」代表取締役の高橋茂さんに取材してみました。高橋さんは10年前からネット選挙解禁に向けて活動してきた“影のキーマン”。日本最大の選挙ポータル「ザ選挙(http://go2senkyo.com/)」の運営や、議員にネット活用のコンサルティングを行っています。

⇒【前編】ネット選挙解禁は女性に有利

ネット選挙で喜ぶのはIT業者とネトウヨ?



 一方で、ビジネスチャンスとばかりIT業者が喜んでいるという話も聞きます。

「確かに永田町にはIT業者が毎日営業に押しかけ、見積もりがウチよりゼロ1つ多い(笑)。僕は、“お金はないけど頑張るぜ”という人が出てこないとネット選挙の意味はないと思うから、コンサルティング料は月5000~1万円です。ところが、月1~2回HPを更新するだけで、業者に月5万円とか、ひどいと月20万円も取られてる議員が実際にいましたからね。ネットに疎い議員ほどそういう業者にひっかかって、SEO対策やらデジタル認証やらのテクニックに走って、肝心の『発信する中身』がスッカラカンになってしまう」

 また、候補者のSNSが炎上したり、ネットに引っ張られて候補者がネトウヨ化する事態が、今まで以上に起こるのでは?

「ありえますね。ただ、誹謗中傷はネット選挙と関係なく今でもあります。民主党の蓮舫さんなんかは、ツイッターで『なでしこジャパン、優勝!すごいです』と一言書いただけで、『お前がスポーツ振興費を仕分けしたくせに白々しい』みたいなコメントが殺到して、炎上しちゃいましたからね。今度の参院選では、カーッと熱くなってひどいことを書いてしまう候補者もいるでしょうし、SNSでの罵倒合戦も起こるでしょう」

 そういうマイナス面を差し引いても、やはりネット選挙解禁には意味がある、と高橋さんは言います。

「今度の参議院選は、過渡期ゆえにネット選挙の悪い面もいろいろ出てくるでしょう。その後、地方選挙を重ねるうちにだんだん落ち着いていく、と僕は見ています」

選挙活動はバカげた決まりだらけ



小泉進次郎,ネット選挙

参院選で全国を応援して回るだろう小泉進次郎議員も、この6月12日に初めてFacebookページを開設

 そもそも選挙期間中にHPの更新ができないなどの古くさい規制は、今までなぜあったのでしょうか?

「公職選挙法は63年も前の1950年にできた法律で、文書図画(ポスターやビラ)についての規制がいろいろあります。で、インターネットが登場したときに、自治省の役人が『HPも文書図画です』と言っちゃったんですね。それを切り分けようというのが、今回のネット選挙解禁です。実は2005年ごろにも解禁に向けて勉強会が進められていましたが、某大物議員が『愛人問題を世界にバラされるなんて嫌だ』と反対していたような状況でした。それがようやく実現したということです」

 公選法には、笑い話のような規制がたくさんあるそうです。選挙期間中の規制の例を挙げると――。

●走っている選挙カーから政策の演説をしてはいけない。「●●をお願いします」と騒々しく名前を連呼するしかない

●ビラを路上などで不特定多数に配ってはいけない。新聞折り込みはOKだが、「子育て支援」などの政策を伝えたくても、若い世代は新聞を取っていないことが多く、伝えようがない。

ビラに候補者の氏名・写真を載せてはいけない。有権者は、政策を書いたビラをもらっても、誰のものだかわからない(氏名・写真がOKなのは、首長選のマニフェストビラだけ)。

●演説会でスクリーンにパワーポイントやスライドを映してはいけない(公職選挙法で規制された文書図画にあたるから。今回のネット選挙解禁でOKに)。

高橋茂,ネット選挙

高橋茂さん

 結局、演説会に行くようなヒマも気力もない「普通の現役世代」には、情報が届きにくかったのです。ネットで情報を集めやすくなれば、そういう普通の人たちが“得をする”……わけですね。

「本当は古くさい公選法全体を変えないといけないのですが、その第一歩がネット選挙運動の解禁なんです」(高橋さん) <TEXT/女子SPA!編集部 PHOTO/海原修平>

【高橋茂さんプロフィール】
1960年生まれ。エンジニアだった2000年、偶然長野県知事選に関わり、政治の世界に。2002年、政治家がネットで情報発信するツール「ネット参謀」を開発し、ネット選挙解禁に向けて活動する。VoiceJapan代表、武蔵大学社会学部非常勤講師。




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