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“マライア・キャリーのパクリ”と囁かれるアリアナ・グランデ。2人を聴き比べると…

 5月18日にマライア・キャリーの最新ベスト盤『#1 to Infinity』がリリースされます(日本盤は6月24日)。新曲「Infinity」が収録されているとはいえ、いったい何枚目のグレイテストヒッツになるのでしょうか。  しかし改めて見てもその曲目は圧巻。タイトルだけで思い出せてしまうものばかりです。 「Emotions」、「Hero」、「Dreamlover」、「Fantasy」、そして「恋人たちのクリスマス」ももちろん収録。90年代はマライアの時代だったのだなとしみじみ。
『#1 To Infinity』

新曲以外の収録曲18曲が、すべて全米No.1ヒットのベスト盤『#1 To Infinity』

 そんなマライアの後継と目されているのが2013年にデビューを果たしたアリアナ・グランデ。沢尻エリカ出演のCMで流れた「Break Free」でもおなじみかもしれません。ところがステージでの振付やPVの演出、さらには私服に至るまでマライアにそっくりだと話題になり、“パクリ疑惑”も検証されるほど。もっともこうしてニュースを提供すること自体、アリアナサイドの戦略に違いないのですが。
アリアナ・グランデ

アリアナ・グランデ

聴き比べると、声の操り方が全く違う

 というわけで、結局は歌声を聴き比べるのが一番。豊かな声量と果てしない高音を持つ共通点から比較されるのは無理もありません。しかしその操り方において、二人は正反対なのではないでしょうか。  音節のつなぎが直線的で、境目をくっきりさせるマライア。一方アリアナはそこに丸みを残しておくことで、良い意味のだらしなさがある。目的の音まで最短距離を取る直線と、少しだけ回り道をする曲線。お互いの「Emotions」を続けて聴くと、異なる資質を持つことがよく分かります。 ⇒【Youtube】Mariah Carey‐Emotions http://youtu.be/NrJEFrth27Q ⇒【Youtube】Emotions‐Ariana Grande(Mariah Carey cover) http://youtu.be/UjzENV7rhhI  その違いは、当然楽曲にも反映される。マライアの歯切れのよさによって、長調に節度ある明るさが宿る。アリアナの瞬間的な気だるさには短調の静かな色合いにグラデーションを付ける力がある。(もちろん“明るいメジャー、暗いマイナー”問題は、突き詰めればキリがないのですが……。) 「Always Be My Baby」と「Love Me Harder」は、格好のサンプルかもしれません。甘さの中にも、背筋を伸ばしてビートに正対するマライアが曲をきりりと引き締める。 ⇒【Youtube】Mariah Carey‐Always Be My Baby http://youtu.be/LfRNRymrv9k  一方アリアナのほんのわずかな遅れが、哀愁から辛気臭さを取り除いている。サビの部分<You gotta, gotta, gotta,gotta>での時間を引きずるような声の使い方は、マライアにはないもの。 ⇒【Youtube】Ariana Grande, The Weeknd‐Love Me Harder http://youtu.be/g5qU7p7yOY8  またニッキー・ミナージュとともに客演したジェシーJの大ヒット「Bang Bang」で聞かせたブルージーな節回しも、今後彼女の武器になりそうです。 ⇒【Youtube】Jessie J, Ariana Grande, Nicki Minaj‐Bang Bang ft. Ariana Grande, Nicki Minaj http://youtu.be/0HDdjwpPM3Y  以上、何かにつけてそっくりと言われてきたマライアとアリアナの違いについて考えてみましたが、最もかけ離れているのが体型であることはナイショです。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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