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夫婦別姓これからどうなる?「反対論はココがおかしい!」【別姓禁止に合憲判決】

 「夫婦別姓を認めない」。「女性は離婚後6か月は再婚してはいけない」。  民法のこの2つの規定が憲法に違反しているか、2015年12月16日、最高裁判所の大法廷で判決が下されました。  後者は「違憲」判決だったのに対して、前者は「合憲」との判決!  つまり「夫婦は同姓にせよ」と義務づける規定は、憲法に違反していない、という判断だったのです。裁判官15人のうち、10人が合憲判断、5人が「違憲」という反対意見を述べたのでした(女性裁判官3人は全員、違憲判断)。 夫婦別姓ガックリです。でも違憲判断をしてくれた裁判官もいるので希望が持てます」  と言うのは、打越さく良(うちこし・さくら)弁護士です。選択的夫婦別姓訴訟弁護団の事務局長である打越さん、さぞ堅そうな人が現れるかと思ったら、クリスマスツリーのネールアートをしたファンキーな女性でした。  今回の判決は、わたしたちにどう影響するのか、聞いてみました。

これからも訴える人は出てくる

 今回の訴訟については、最高裁がファイナルアンサー。ただ、夫婦別姓はもう25年以上前から議論になっていて、また訴えを起こす人が出てくるでしょう。打越さんも「何事もなかったように、何年後かにまた訴訟をしようと思ってる」とか。  また、裁判とは関係なく、国会に民法改正案が出される可能性もゼロではありません(実際、1996年に「改正せよ」という答申が法制審議会から出されている)。  とはいえ、「結婚で姓を変えたくない」と思っている人にとって、道のりは遠そう。世間の反対が根強いのは、「明らかに、再婚禁止期間よりも選択的夫婦別姓のほうなんです」と打越さんは言います。

「同姓でも別姓でも選べる」だけのことが、なぜ反対される?

 そもそも、選択的夫婦別姓に反対している人は、なぜ反対しているんでしょうか? 「反対派の言い分は、夫婦の姓が違うと『家族の絆が壊れる』とか『子どもが非行に走る』とか。でも、“別姓にしたら家族が解体した”という証拠を出して反論する人はいません。反対の理由がすごくぼんやりしてるんですよ」(打越さん、以下同)
打越さく良弁護士

めげない打越さん

 でも、ちょっと考えれば、この「家族の絆」論に根拠がないことはすぐわかると打越さん。主な3つの観点を挙げてみると… ========= (1)夫婦同姓を法律で強制しているのは、世界でほぼ日本だけ。 「だったら、諸外国で別姓OKのせいで家族崩壊した証拠を出せばいいのに、絶対に出さないんですよ」。  もし別姓=絆崩壊なら、日本以外の世界中で崩壊してるはずですからね。 (2)日本で夫婦同姓が義務づけられたのは、この100年余りのことで、ぜんぜん「日本古来の伝統」じゃない。  同姓が義務づけられたのは明治31年施行の旧民法から(ただし旧民法に「夫婦同姓」の規定はなく、妻が夫の家に入ることで夫の家の氏を称することになった)。 (3)“選択的”夫婦別姓は、「“家族の絆”のために同姓にしたい人はすればいいし、したくない人はしなければいい」というだけのこと。 「ある新聞の投書で、『それなりの覚悟で他人から夫婦になるのだから、結婚したら同じ姓になりたい』(24歳女性)という別姓反対の声がありましたが、どうぞ同姓にしてください、誰も止めませんと(笑)。  別に夫婦別姓を義務づけるわけじゃない、ということが理解されてないですね。自民党は、『選択的夫婦別姓』とは言わずに『夫婦別姓』と、あえて誤解を招く言い方をするんですよ」 ===============  聞けば聞くほど、「選択的夫婦別姓」に反対する理由が見つかりませんね…。  「別姓反対を叫んでいる人は、『結婚するなら夫に従順になって、夫の姓を名乗るのが嬉しい(キャピッ)って思いなさい』と言いたいんですよ、たぶんね。でも、そんなこと表立って言えないから、どこにも根拠がない『絆が』『伝統が』とか言ってるんでしょう」

ネトウヨからの攻撃は「ブス」とか…

 そんな中で選択的夫婦別姓を主張する打越さんたちは、さぞネトウヨなどに攻撃されるのでは? 「原告へのWEB上の悪口はいろいろですが、せいぜい、『ブス』とか(笑)。あと『半島に帰れ』とか。いや、日本人だから別姓訴訟をやってるわけで。韓国や中国は、法律で夫婦別姓ですからね。  でも、私に対しては、ほとんどネトウヨの攻撃もないんですよ。FacebookやTwitterもオープンにして、『いつでもかかってこい! 論破してやるよ』と思ってるのに、誰もカラんでこないの」  ネトウヨも攻撃する材料がないってことなんでしょうか。  いずれにせよ、「選択的夫婦別姓」の議論はまだまだ続いていきそうです。各世論調査を見ても、賛成と反対に2分されています。 「ただ、反対は60歳以上の男性で多くて、20~30代の特に女性は賛成が多いんです。世のおじさまたちは、結婚で名前が変わるのを『自分のこと』としてイメージできないんですよ」  そのおじさま世代が消えていけば、情勢も変わってくるのでしょうが…。 <TEXT/和久井香菜子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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