早速メニューに目を通すと、そこには渋い居酒屋の酒肴にしてはいささか目を疑う存在が飛び込んできた。
「ハムトースト」
急いで時計を確認する。7時だ、もちろんPMの方。モーニングセットはもう終わっている時間だ。ここは名古屋なのか? カウンターの中にはひたすら鍋を振っている店主。ライブクッキングだ。そして鍋の中にはナポリタン。彼が「まこと」なのだろう。
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ナポリタンをつくる店主
多大な期待に胸を膨らませながら、
「ハムトーストとレモンサワー」という末期のアル中患者の朝ごはんみたいなオーダーをし、メニューが到来するのを待つ。
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ハムトーストとレモンサワー
……。
到着したのはやはりどうみても8枚切りのトーストにハムを挟んだハムトースト。朝ごはんである。
一口かじってみる……!!!!!!!!!!!。いたって普通にいい塩梅に焼かれたいたって普通のトーストが、朝食から次第にツマミにかわっていくのがわかる。
「カリッ」という音とともにかじると、そこには不健康なまでに塗られた辛子マヨネーズといたって普通のハムの姿が。ハムトーストってこんなに旨かったっけ。追い打ちをかけるように挟まれた濃い味の卵焼きがその存在を主張してくる。ちなみに縦にするとこんな感じ。

香ばしいパンと、辛子マヨネーズをまとったハムと卵のハーモニー
「カリッ、もぐもぐ。カリッ、もぐもぐ」
喉がパサついたらレモンサワーを「グビッ」。
「カリッ、もぐもぐ、グビッ。カリッ、もぐもぐ、グビッ。カリッ、もぐもぐ(中略)」
永遠にこの行為を続けていたくなる至福の時間。
女性誌の酒場特集に出てくるお上品なクラブハウス系トーストとは見た目が全然ちがうけど(サンドイッチなのに盛り付けが平面で断面が見えないし)なんかおちつく味なのである。お母さんがいないときにお父さんが頑張って料理してくれて、全く期待していなかったのになんか美味しくて少し見直しちゃう感じの。
これはめちゃめちゃ旨い。まこと曰く、料理はすべて独学だという。
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まことのハムトーストはマヨネーズが多めでジューシー
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ホットサンドメーカーで強火で焼く
「ごちそうさま、おいしかったです」
至福のひと時を過ごし、そう告げると人懐っこい顔でまことさんは笑いかけてくれた。
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あたたかな笑顔のまことさん
「最後に一つだけいいですか。失礼でなければお名前をお伺いしたいんですが」
不躾ではあるがまことさんの苗字がどうしても聞きたくなり、思い切って切り出した。
店主「アイバトシユキ」
私「……え、あ、そうですか。し、失礼します」
なぜ“まこと”?
今回、私にそこまで聞く勇気はなかった。ミステリーシティ、赤羽。私は釈然としないままこの街を後にした……。
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●居酒屋まこと
東京都北区赤羽西4-23-5
店主アイバトシユキさんが一人で切り盛りする、超絶居心地のいい居酒屋。独学で学んだというメニューはどれも本当においしい。ハムトーストはもちろん、おすすめはナポリタン。太目のスパゲッティにデミグラスソースが絡みつく昭和の懐かしいナポリタンは酒のアテに最高。やさしい店主のアイバさんの笑顔にも癒されます。

ナポリタン
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【五箇公貴 プロフィール】
テレビ東京のドラマ・映画プロデューサー。『リバースエッジ大川端探偵社』『怪奇恋愛作戦』『メンズ温泉』などの深夜ドラマ・バラエティから、『キス我慢選手権』『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』などの番組の映画化まで幅広く手掛ける。
<TEXT/PHOTO 五箇公貴>