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宇多田ヒカルは天才ではない―新作『fantome』の強みと弱み

言葉のぶつ切りは、もはや宇多田の“味”か

 そしてアクセントのズレ以上に見受けられるのが、言葉のぶつ切りです。文脈や音節の途中で区切ってしまっては意味が通じなくなる部分が、メロディの都合で分断されてしまうのですね。  また逆に、本来は一息入れて休むべきところをつなげてしまうケースもある。いずれにせよ、曲を聴くときに活字の助けが必要なのは、ポップソングとしては弱みなのではないでしょうか。 http://youtu.be/pCnM4sUQ67Y  もっとも、そうした部分はデビュー以来からの味でもある。クセの強いチーズと同じで、好きな人にとってはたまらないことも理解できます。

宇多田ヒカルは天才なんだろうか?

 しかし、言われるように宇多田ヒカルは天才なのでしょうか?  ロサンゼルスタイムスに「Stop overusing the word ‘genius’」(天才という単語の濫用は止めにしよう、2016年9月15日)という記事が掲載されていました。  その中で、スティーブ・ジョブス(Apple創業者)やマーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)が天才でない理由が、こう説明されていました。 「彼らは私たちの暮らす世界は変えたと言えるかもしれない。しかし、いまだ世界の見え方を変えるには至っていない」  宇多田ヒカルのアウトサイダー的な音楽も、Jポップの異形が洗練した形で立ち現れているだけだと考えると、いったん重たい冠を外してあげたほうがいいのかもしれません。 <TEXT/石黒隆之> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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