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宇多田ヒカルは天才ではない―新作『fantome』の強みと弱み

 突然の人間活動宣言から6年。宇多田ヒカルが、アルバム『Fantome』をリリースしました。ここ半年ほどで彼女の歌を耳にする機会も増え、“おかえりヒッキー”といった歓迎ムードも高まっています。
宇多田ヒカル

9月28日にリリースされた宇多田ヒカルのアルバム『fantome』※画像をクリックすると、Amazonのページにジャンプします。

 そんな中、9月22日に放送された『SONGS』(NHK総合)に出演した折、彼女が興味深いことを話していたのです。 “日本社会にもなじめないし、海外にいても日本人であることを意識させられる。つまり、アウトサイダーなんだ”と。

詞のアクセントとメロディが合わないのは「アウトサイダー」ゆえ?

 これを踏まえて『Fantome』を聴くと、その感覚が音楽に如実にあらわれていることが分かります。  まず、サウンドと曲の関係。サム・スミスなどを手掛けた敏腕プロデューサーによるモダンな手触りとは裏腹に、曲の構成そのものは実に古風な展開なのですね。カラオケで歌い上げたくなるような、起伏の道すじが分かりやすいのです。  その意味で象徴的なのが、リードトラックの「道」(トラック1)。「Lean On」(Major Lazor)のように、フックだらけでギトギトの展開になるかと思いきや、音楽が横に流れていく意外性がある。洋楽でも歌謡曲でもない。改めて不思議な存在なのだと思います。  そのうえで気になるのが、詞とメロディの関係性でしょうか。メロディが日本語のアクセントと一致しないので、耳だけでは曲と詞が一体となって捉えられないという難点があるのです。 http://youtu.be/eMPSWiEdC8k  たとえばNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』の主題歌「花束を君に」(トラック3)の“花束”。サビの歌い出し、歌い終わりで2度ともメロディが違うのです。しかもいずれも単語本来の抑揚と合わないので、曲の足場が定まりません。  音符とコードの組み合わせだけ取れば、「Everyday I Write The Book」(エルヴィス・コステロ)のように軽やかなのですが、この日本語詞だといかんせんモタついてしまう。
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宇多田流「言葉のぶつ切り」は、弱みか強みか
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