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川谷絵音・ゲスの極み「CD発売中止、活動自粛」は、おかしくないか?過剰反応の恐ろしさ

ミュージシャンの素行と作品の質は関係ない

 百歩譲って、そうした多数の声が正しかったとしましょう。だとすれば、いま出ているビートルズやローリング・ストーンズ、エリック・クラプトンなどの往年の名作も同様に回収されなければアンフェアです。  すでに時効とはいえ、川谷などとは比べ物にならないほど法的にも社会的にもワルいことばかりしてきたのですから。  だけど、彼らはみんな勲章持ちです。そこには素行と作品の質は分けて考えなければならないという、明確な前提があるのですね。  ビートルズやストーンズの例が古すぎるのならば、フィル・スペクターはどうでしょう。第2級殺人の罪で現在も収監中でありながら、偉大なプロデューサーとの名声は保たれたままです。ここ日本でも、大瀧詠一や山下達郎などに影響を与えた偉大な人物ということで、マニアの間で神格化されています。  この“人殺し”のCDは店頭から、そしてアマゾンの倉庫から消えることなく、いまこのときも普通に流通している。不倫や未成年女子との飲酒と比べて、どちらが重大事犯かは言うまでもありません。
新作『達磨林檎』のジャケット

新作『達磨林檎』のジャケットもできていた

 こうした現状から考えても、ゲスの極み乙女が音楽活動を中止しなければならない理由など、どこにもないことが分かるのではないでしょうか。ミュージシャン・川谷絵音の評価は、絶対的に彼の作品によってなされなければならず、その音楽を市場から排するかどうかは、ひとえに聴き手の見識によって決定されるのです。  あまりにも腐臭を放つ“良識”にはフタをしたくなるレコード会社の気持ちも分からないではありません。しかしそれでも言わねばなりません。今回の決定は音楽を扱う事業者としてはまぎれもなく自殺行為である、と。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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