SMAP最高の名曲「夜空ノムコウ」が言い当てた“かったるい未来”
この12月でとうとう解散してしまうSMAP。1日に行われた『SMAP×SMAP』の収録では「世界に一つだけの花」を歌い、中居正広が涙したとの報道もありました。21日にはファンが選んだ50曲が収録されたベスト盤もリリース。25年の歴史に終止符が打たれようとしています。
そこで改めて、やはり「夜空ノムコウ」(作詞:スガシカオ、作曲:川村結花)は特別な1曲だと思うのです。
筆者は特別SMAPのファンではないので、この曲がグループとファンにどんな意味を持つかは不明です。
しかし、日本のヒットチャート、とりわけミリオンヒットを記録した246曲の中で、唯一“明日はかったるい”と明言している「夜空ノムコウ」の価値は計り知れません。
“がんばれば上手くいく”とも“愛があれば大丈夫”とも言わなければ、“世界を変える”とも“壁をぶっ壊す”とも歌わない。その場しのぎの希望や、子供じみた不平不満を叩きつけるのではなく、日々生活する人にとってもっとリアルなのは静かな倦怠感だと言い当てたからこそ、「夜空ノムコウ」は特別なのです。
<全てが思うほど うまくはいかないみたいだ>
<このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ>
<夜空のむこうには もう明日が待っている>
「明日」を「もう」来てしまうもの、あまりありがたくないと捉えざるを得ない世の中の空気。絵空事ばかりのJポップにあって、スガシカオがようやくその“当り前”を描くことに成功したのです。
こう言うと、“「およげ! たいやきくん」(1975年のミリオンヒット)を忘れてないか?”と思うかもしれません。しかしあの曲にはプロの作家による慎重な寓意が込められたうえ、オチまで付いている。“世の中とかシステムとはこういうものである”というある程度の断定がなされている点で、聴き手の入りこむ余地が限られてしまうのです。
それからすると、「夜空ノムコウ」には明確な結末がありません。スガシカオ自身にも職業的な作詞家より、シンガーソングライターの立ち位置から聴き手に丸投げしてしまうラフさがある。“なんかモヤモヤするなぁ”との共通認識までは描いても、原因が何なのかは明らかにしないし、そんな不具合に対して具体的なアクションをうながすわけでもない。
結果、聴き手は自分なりの解釈や感じ方をもとに物語の続きを考えさせられてしまう。言ってみれば、地に足を着けて聴ける唯一のミリオンヒットが「夜空ノムコウ」なのですね。
ミリオンヒット史上唯一、静かな倦怠感を歌った曲
“なんかモヤモヤするなぁ”という気分
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