上京OLが、2年で家なし風俗嬢になるまで【女性の貧困】
あたしは、人妻デリヘル嬢(バツイチですが)の『藤村綾』と申します。風俗で働くベテラン風俗嬢。あたしが見た世界をみなさんにもお見せします。
風俗嬢についている名前はほとんどが源氏名だ。本名を名乗って働いている風俗嬢は本当に少数だと思う。
『あい』『あみ』『ゆうこ』など、ありきたりな名前でもやはり源氏名をつける。
源氏名を付ける理由の1つは「風俗嬢としての自分」を演じるため。もう1つは、「風俗嬢とプライベートを分けるため」だ。
風俗の仕事をする上でその実、名前なんてさほど関係はない。指名をされても、結局最後まで『あやちゃん』と呼ばれないことは多々ある。お客さんの方も偽名を使う。虚構で固められているグレーな世界だ。
いま、日本の風俗嬢はおおよそ30万人いるといわれていて、数字にしてみるとこんなに多いのかと驚いてしまう。
「石を投げれば風俗嬢にあたる」と誰かが言っていたことをふと思い出す。
風俗嬢は多いなりに、ひとりひとりの物語がある。今回はやや貧困層のデリヘル嬢・みゆ(仮名・22歳)の物語を書きたいと思う。
=============================
デリヘル嬢になって2年。18歳のとき田舎から上京して20歳まで事務職についていた。うまくいくと思っていた矢先、会社内のいじめのターゲットになり、うつ病になって退社するしかなくなった。
実家にお金を送っていたので貯金なんてちっともなくて、ほんの少しの蓄えもあっけなくなくなって、毎日菓子パンを2つかじる生活。餓死寸前になった。
そのうえ、うつ病も悪くなった。アパートを家賃滞納で追い出されて、あたしはネットカフェに寝泊まりするようになった。
シャワーもあるネットカフェは快適だったけど、時々、うつ病があたしの理性をおかしくした。
あたしは自分でないもうひとりの自分のときに援助交際をして、その日のお金をつくった。うつのときでないと、お父さんほど歳の離れた男性と“行為”なんてできない。
『みゆ』という偽名を名乗ると、不思議ともう一人のあたしになれた。
あたしの本当の名前は『深雪』。深い雪と書いて“みゆき”だ。けれど、深雪のあたしはとうの昔に死んでいる。今は、『みゆ』があたしのほとんどを支配している。
ある日、援助交際をしているおやじにデリバリーヘルスを紹介された。
60分6000円と、とにかく単価が安い激安店。
「みゆは若いけど、躁うつが激しいし、悪いけど見た目もよくない。出っ歯だろ。安い店しか紹介できないよ」
おやじは、ぴしゃりと辛辣な言葉を並べてあたしに言った。
「若いだけが取り柄だ。若いだけが」
最後に若いだけ、をやけに強調して付け足した。
わかっていた。あたしが醜いことは。いじめの原因はこの顔だ。見た目がひどく悪いあたしは、その分性格でカバーをしてきた。けれど正直、性格も根暗だったので、徐々に皮が剥がれていって、いじめにあった。思い返せば子どものことからいじめられてきた気がする。
片親(母)で貧乏だったから、うなぎを知ったのは上京してからだった。アナゴをうなぎだと18歳まで思ってきた。
風俗嬢の名前はあってないようなもの
「嫌い!風俗嬢のあたし」みゆ・22歳の場合
「取り柄は若さだけ」60分6000円の店を紹介された
1
2