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浅田真央が教えてくれた、“負けた自分”との向き合い方

大逆転負けしたあとの記者会見で

 アメリカで昨年末に発売された『Win at Losing: How Our Biggest Setbacks Lead to Our Greatest Gains』(著・Sam Weinman)という本には、挫折から学ぶことでより豊かな成功を手にしたスポーツ選手や政治家、起業家などのエピソードが収められています。“ホワイトシャーク”の愛称で知られる、オーストラリアのプロゴルファー、グレッグ・ノーマンの例をご紹介しましょう。
グレッグ・ノーマン

グレッグ・ノーマン(C) Jerry Coli

 ゴルファー最大の憧れ、マスターズで2度勝つチャンスがありながら、彼はいずれも逃しているのです。特に前日まで2位に6打差という大差をつけながら、最終日でニック・ファルドに大逆転を許した1996年の大会は、いまでも語り草になっています。  その96年の試合後の会見で、ノーマンはこう語ったのです。 「マスターズに負けたからといって、世界が終わるわけじゃない。自分にはゴルフ以外に素晴らしい人生がある。プレーが乱れたのには、きっと何かしら理由があったに違いない。まあ試練と言うほかないだろう。しかし、その試練とやらの正体がいまだによく分からないのだが」  会場にはノーマンを嫌うジャーナリストもいたといいます。そういった連中にとって格好の餌食となる無様な負け方をしながらも潔く会見を開いたノーマン。先の発言も本音ではなかったかもしれません。  それでも人前に現れ、その場を取り繕い、自分の家族やスタッフをリラックスさせることが大事だった。それが美しい敗者にふさわしい行動だったのです。  “勝てなかった”という事実と犯した過ち、その全てを自分の身に起きた貴い出来事として受け入れる。そんな辛すぎる作業を経て、初めて次へ向けて立ち上がれるのだと、ノーマンは語っています。

敗北には正面から向き合うしかない

浅田真央 『Smile』~氷上の妖精10年の軌跡~

浅田真央 『Smile~氷上の妖精10年の軌跡~ 』

 筆者も含め、浅田真央の演技を観ていた人の9割以上はジャンプやスピンの種類など分からなかったでしょう。乱暴な言い方をすれば、そんな枝葉はどうでもよかったのです。  決して自らを卑下することなく、至らない点があれば、ひとつひとつ丁寧に改善していく。愚直なのに清々しい。  かつてモハメド・アリはこう語りました。 「もしも敗北に直面したなら、正面から向き合う以外にすべきことはない。それが自分を信じてくれる人々に対しての義務なんだ」  どうやら偉大な人同士、共通点がありそうです。 <TEXT/石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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