村上虹郎×熊切和嘉監督、肉体で語る映画『武曲 MUKOKU』を振り返る
――綾野さん演じる矢田部研吾と融は、台風の夜に決闘します。あそこは拝見していて『私の男』の赤い雨のシーンがよぎりました。研吾と融のシーンも見ようによってはラブシーンかなと。
熊切:あそこは普通に台風の中でやりあうだけでも相当大変なんですけど、それにプラスして、ふたりの中にある、言ってみれば押し寄せてくる過去のトラウマなどのイメージもひっくるめてぐちゃぐちゃになっていくような感じにしたかったんです。それでああいう(演出の入った)雨を降らせたんです。
どうなるか僕自身分からない部分がありましたが、でもラブシーンというのは、ある種、嬉しい感想ですね。彼らの何か、魂が、喜びあってなぜか輝くというようにしたかったので。
村上:いつまで続くんだっていう感じの撮影でした(苦笑)。でもすべてがどうでもよくなるくらい楽しかった。完全に夜の撮影なので、夜7時くらいからリハーサルを始めて9時に撮り始めて、朝明るくなるギリギリまで撮るっていう。
どれだけ生っぽく見せるかというのも大事だったので、殺陣に関して僕はその日に教えてもらう程度でほとんどぶっつけでした。綾野さんはアクションの経験が全然違うので助けていただきました。とにかく大きな目標としては怪我をしないことでした。
――大変なシーンだったけれど、同時に燃えた?
村上:そうですね。木刀を持って決闘の場に入っていく、それだけでもうゾクゾクしましたから。まだ対決していないのに、現場に入ったその瞬間からずっと戦っていました。





