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不妊治療と、子どもの発達障害リスク…日本では知らされない大問題

 不妊治療…30~40代の女性にとっては、気になる言葉ではないでしょうか。  実際、不妊治療を受けるカップルは急増しています。ですがどんな医療にもリスクはつきもの。実は不妊治療にも、大きなリスクがあるのに、それが患者に知らされていないというのです。 妊娠 そのショッキングな実態に迫る『本当は怖い不妊治療』を上梓した、ジャーナリストの草薙厚子さんに聞きました(同書の監修は黒田優佳子医師)。
本当は怖い不妊治療

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 リスクについて聞く前に、まず基礎知識を。「不妊治療」に使われる医療技術である「生殖補助医療」には、次の3つの受精法があります。 ①人工授精:精子を子宮内に送り込むだけの方法 ②体外受精:体外に取り出した卵子に精子をふりかけて、精子が自力で卵子に侵入するための環境を整え、培養液内で受精させてから子宮に戻す方法 ③顕微授精:体外に取り出した卵子に顕微鏡を用いて極細のガラス針で人為的に1匹の精子を穿刺注入し、受精させてから子宮に戻す方法

生まれた子が自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍

――この本の中で一番衝撃的だったのは「顕微授精に代表される生殖補助医療によって生まれた子は、そうでない子に比べ、自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍である」という研究結果でした。 草薙:私が取材を進めていく中で、この記事を見つけたのですが、この研究結果は、2015年3月にアメリカの権威ある学術誌に掲載されて世界にショックを与えたものです。しかし、なぜか日本ではほとんど報道されていないのです。  その内容はコロンビア大学のピーター・ベアマン教授が行った研究で、もとになったデータはアメリカ疾病対策予防センターによる大規模な疫学調査です(※)。日本でニュースにならなかったのは不思議に思います。
論文

「生殖補助技術と自閉症の関連性」と題されたこの論文は、ネットでも読むことができる

――自主規制するようなデリケートな部分があるのでしょうか。 草薙:最近、よく耳にする機会が増えた自閉症スペクトラム障害は発達障害のひとつで、なかなかデリケートな問題ではあると思います。  自閉症スペクトラム障害は、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心に強いこだわりがあるのが特徴で、知的障害をともなうこともあります。軽度だと、ふつうに社会生活できる人もたくさんいらっしゃいます。また、関連書物も数多く出版されていますから、一般的に以前より知識と理解が深まっていると思います。  私は1990年代から少年事件の取材をしてきて、自閉症スペクトラム障害が事件の要因の一つになるケースが多いと感じていたんですね。たとえば、神戸連続児童殺傷事件(1997年)を起こした「少年A」は、少年院で自閉症スペクトラム障害と診断されています。  ただし、いつも取材を受ける際は強く訴えているのですが、自閉症スペクトラム障害だから事件を起こすのではなく、誘発要因の一つである可能性があるということです。  ですから、早期発見・早期治療によって、周りで支援をすることが大事なポイントなのです。  そんななかで、「生殖補助医療で生まれる子は、自閉症スペクトラム障害のリスクが2倍」という研究結果を聞いて、関心を持ったのがこの本を書いたきっかけです。  もちろん、これも生殖補助医療そのものが問題だと言いたいわけではなくて、そのリスクを知ったうえで、どの不妊治療の方法を選択していくかを決めるべきだと思うんです。
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不妊クリニックは、ほとんどリスクを説明していない
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