高橋一生の新CM、残念なブルースハープ演奏だけど絶賛の嵐…
先日、「2017上半期ブレイク俳優」(オリコン)で1位に輝いた俳優の高橋一生(36)。彼がブルースハープ(ハーモニカ)の演奏を披露する「氷結ICEBOX」のCMとウェブムービーが話題になっています。
東京スカパラダイスオーケストラやトロンボーンの浜野謙太(35)をしたがえてセッションする姿に、SNSやネットニュースには「カッコよすぎる」「最高」と絶賛の声があふれています。
⇒【YouTube】はコチラ 氷結(R) ICEBOX「 あたらしくいこう 2017」 高橋一生×浜野謙太篇 ウェブムービー http://youtu.be/edt3r6Ur_H4
http://youtu.be/edt3r6Ur_H4
音楽好きとしては、大人気の俳優がこんな地味な楽器を選んでくれたおかげで注目が集まるのは本当に嬉しいことです。ハーモニカはフォークソングのお供的な扱いはあっても、黒人音楽の流れをくんだ演奏って、売れ線のJポップではほとんどお目にかかれないですからね。
というわけで、最初たまたま音声を消した状態で見たのですが、“おっ、キレのいい振り付けでカッコいいな”と感じました。ハーモニカを構える高橋さんのシルエットも相変わらず凛々しい。しかし、その後改めて音付きで動画を確認すると、これが少しイメージと違ったのです。
顔の表情や派手なアクションと出ている音がミスマッチで、どうにもすわりが悪い。“ホゲェ~、ピェ~”といった不規則音が、バンド演奏の背後で鳴り続けている。それなのに映像ではみんなものすごくノリノリなので、なんだかシュールでした。
こんなことを言うと、“お前は俳優相手に何を言っているんだ”と思われるかもしれませんが、このCMをきっかけにブルースハープという楽器を知った人が誤解をしてしまうのは悲しいので、老婆心ながら、やっぱりこれは違うのだと指摘しておきたいのです。
もちろん、CM的には人気俳優に意外なことをやらせて話題になった時点で成功です。そしてオファーに応じた高橋さんだって何も悪くない。
でも、これが本筋、王道のブルースハープで、問答無用にカッコいいものだと理解されてしまったら、かえってハーモニカや音楽そのものに申し訳が立ちません。これでは基本の味付けを知らずに珍味を楽しんでいるようなものでしょう。
そこで本業のミュージシャンを引き合いにだすのは不公平なので、同じ俳優のブルース・ウィリスをご紹介しましょう。
ご存知の通り、ハーモニカは口と唇に接近しています。つまり、その人自身の声や話し方が反映されるわけで、吹けばすぐに音が出る気軽さとは裏腹に、ごまかしの効かない楽器でもあるのですね。
⇒【YouTube】はコチラ Devil Woman – Bruce Willis http://youtu.be/nDXkd2NyCCE
それを踏まえてブルース・ウィリスの演奏を聴くと、ハーモニカの名手たちのフレーズを研究しつつ、それをじっくりと分解して、自分なりのスピードで咀嚼できるように演奏しているのに気づきます。
これが、先ほどの“基本の味付け”に当たる部分で、本職だろうと趣味だろうと音楽を好むということの第一歩となるべき部分なのだと思います。
もっとも、CMはインパクト重視ですから、ハーモニカを吹いているのが一発で分かるアクションとフレージングが求められたのかもしれません。それも分かるのですが、同時に“つまらない基礎”も押さえておかないと、どのようにしたって音楽は盛り上がらないのではないか。そんなことを考えてしまうCMでした。
<TEXT/音楽批評・石黒隆之>
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石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4



