豊田真由子議員を生んだ「東大法学部」の特殊すぎるプライド。女性は意外とキラキラ系
「ジェンダーって誰?」と聞かれてノケゾった
ここまで、東大法学部の人たちを、特殊すぎる価値観を持った変人のように書いてしまいましたが、よい部分を挙げるならば、努力を惜しまない人が多いことです。特に国Ⅰや司法試験を目指す人は、大学の講義をしっかり受けて、夜は専門の塾に通います。東大に合格した翌月から、受験勉強以上の猛勉強を始めるのです。
東大法学部の学生は、勉強が苦ではなく、比喩的に言えば「出されたものは全部食べる」のが得意な人々です。ということは、知識教養の豊かな学生が多いのでしょうか。確かに、知識欲のためというよりは負けず嫌いで、何でも語れるように難しい本を読みまくる学生がたまにいました。
しかし、これも意外かもしれませんが、学校や塾で出された課題以外の本を読まない人も少なからずいました。基本的に要領がよいので、無駄なことをしないのです。娯楽小説すら読まず、「教科書以外の文章を読んだことがない」と豪語する男子学生もいました。20年前とはいえ、別の男子学生に、「よく本のタイトルになってる、ジェンダーって『誰』?」と尋ねられたときは、その無教養さに驚きすぎて、つい本当のことを教えてしまいました。少しは本を読め!(心の叫び)
女性たちは超努力家のキラキラ系
最後に、東大法学部の女性たちについてお話ししましょう。東大法学部の男女比は男性に偏っていて、1~2割が女性です。それらの女性については、ガリ勉タイプのダサいブスという偏見があるかもしれません。まるきり間違っているというわけでもなく、私自身がそのようなブスでした。
とはいえ私のような女性はごく少数で、大多数は、美容やファッションにも努力を惜しまない、おしゃれな女性でした。男性は東大生であるだけで称賛されますが、女性は「勉強はできるが、ブスでモテないから、女として失格だ」という、やっかみまじりの侮蔑に(現在ですら)さらされやすいものです。
東大法学部の女性は向上心とプライドが高いので、「ブスでモテない」などと絶対に言わせないために努力します。ブスでモテないことは女の恥だという、男目線の規範を内面化しているわけですが、20歳そこそこの若者にそれを指摘するのは酷だと思います。「私は高校まではガリ勉だったから、がんばって綺麗になって、絶対に彼氏を作る!」と意気込んでいる女性は私の周囲に何人もいて、その全員が、入学して半年以内に東大生の彼氏を作っていました。
東大法学部の女性たちは、もちろん勉学や就活でも手を抜きません。「一般的な男性以上の出世」と、結婚・出産などの「女性としての幸せ」の両方を本気で追求するスーパーウーマンです。この夢を実現する女性も珍しくないようです。ただしその裏に、どれだけの恵まれた出身環境と、常軌を逸した努力があるのかは、想像に難くありません。
「努力家で向上心に溢れた人たちだけど、自分はなじめそうにない。」結局、私はこのように感じ、法学部の人たちとは疎遠になりました。それから20年が経過しましたが、このように思い出すたび、異文化空間だという印象は深まるばかりです。
<TEXT/金田淳子 ※タイトル・小見出し・冒頭文は「女子SPA!」編集部による>
【金田淳子】やおい・ボーイズラブ研究家。1973年富山県生まれ。1993年に東大文科Ⅰ類(法学部に進学する学科)入学。1996年に東大文学部に学士入学、1999年に東大文学部大学院に入学。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見俊哉編著、有斐閣)『オトコのカラダはキモチいい』 (二村ヒトシ・岡田育・金田淳子共著、KADOKAWA/メディアファクトリー)など。 1
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