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夏に“抜き襟”は危険!恐怖のセミ事件【シングルマザー、家を買う/66章】

 友達親子にギブアップを伝え、帰ろうとすると、背中に「ビビビッ」と音と共に異物が入り込んできた。もう私は大パニックである。ギャーギャーと叫びまわり、その声につられて娘と息子は大号泣。友達親子に大爆笑されながら「ど、ど、どうしたの……!?」と言われても、冷静になれない。背中にいるのだ。絶対にいるのだ! 私の最大の敵、セミが! シングルマザー、家を買う/66章_2 その日、私は今流行りの“抜き襟シャツ”を着ていたのだが、その抜き襟が上手いこと受け口になっていたらしい。セミはするっと入り込み、背中で暴れ出したのだ。もうその場で脱ぎたかったがさすがに公道。涙を流しながら爆笑する友達に別れをつげ、猛ダッシュで家に帰るとそのまま脱衣所でシャツを脱ぐ。するとポロッとご臨終したセミが出てきたではないか……!  もう我が家の3人は大絶叫である。そのまま現実逃避をするかのごとく、お風呂に入り込み、「あのセミをどうするか」という会議が浴槽で開かれた。しかし答えはでない。「娘が拾ってよ!」と言うと、「ママが拾いなよ! ママがつれて来たんだから!」と娘は真顔で反論してくる。そりゃそうだ。私がいけない。息子は怯えて私に抱きついたままだ。それはそれでかわいい。  とりあえず3人で身体を洗い、脱衣所のドアをそっと開けると、そこにあったはずのセミの亡骸がない。焦ってリビングに行くと、セミの足らしきものが……! そう、我が家のデブ猫、プー太郎がどうやら食べてくれたらしい! その日はご褒美にciaoチュールをプー太郎に与え、安堵しながら眠りにつくことが出来たのだった――。  オシャレはガマンというが、まさか抜き襟が滑走路のごとく、上手くセミを着陸させるとは誰が想像しただろうか。その日を境に、私は抜き襟シャツを着ていない。そしてもう二度と、着ることはないだろう。さようなら私のオシャレ、抜き襟シャツ。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky【ワタナベチヒロ プロフィール】 漫画家、イラストレーター。お金にまつわる役立つ知識をオールマンガで1冊にまとめた著書『お金に泣かされないための100の法則』(ファイナンシャルプランナー山口京子先生が監修)が主婦と生活社より発売中。 ※このエッセイは月ごとに配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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シングルマザー、家を買う

年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える!

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