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ファッションも歌もカッコいい!薬物断ちした新生マイリー・サイラス

 日本ではお騒がせセレブとして有名なアメリカの歌手、マイリー・サイラス(24)が5枚目のアルバム『Younger Now』をリリースしました。  奇抜なファッションで世間を驚かせてきたこれまでとは違って、最近はすっかり落ち着いた装いに。
 かつてのド派手なコスチュームは、「私ほど吸ってた人はいない」と語るほどにマリファナ漬けだった影響なのですが、本作の制作にあたってきっぱりと断ったのだそう。それがカントリー風味の楽曲やサウンド、そしてシンプルでシックな出で立ちにあらわれています。

かつてのブッ飛びマイリーを懐かしむフェミも…

 そんなわけで、筆者はマイリーの“転向”を好意的に見ていました。ところが、『New Yorker』の電子版で配信された記事では、フェミニズムの立場から批判されてしまったのです。“いかにも古い考え方の人たちから喜ばれるおしとやかな女性になってしまって残念。あのぶっ飛んだマイリーはどこへ行ったの?”というのですね。
マイリー・サイラス2015

2015 MTV Video Music Awardsでのマイリー・サイラス。ほぼ裸!

マイリー・サイラス2012

2012 MTV Video Music Awardsでのマイリー

 確かにそんな見方もできるかもしれません。でも好奇の目で見る周囲にやけっぱちで応える姿が痛々しかったので、今のほうがすっきりしていると思うのですが……。  というのも、マイリーが新作のプロモーションで披露したライブパフォーマンスが素晴らしかったからです。アメリカの人気番組『The Tonight Show Starring Jimmy Fallon』に出演した際のパフォーマンスが思いがけずよかった。  付け焼き刃では身につかない低音域の歌に、かすれ具合と湿ったトーンがほどよくブレンドした声質も魅力的で、“マイリー・サイラスってこんなによかったっけ?”と驚きました。

音楽と、ファッション&ギターが見事にマッチ

 しかし、それだけではないのが新生マイリー。以前は人の目を引くばかりだったファッションが、今回はサウンドや楽曲とマッチするようにコーディネートされているのですね。  たとえば、トム・ペティ(享年66)に弔意を示す「Wildflowers」を歌うときには、曲名に合わせて淡いピンクのロングドレスをしっとりと着こなす。  その一方、「These Boots Are Made for Walkin’」(ナンシー・シナトラのカバー)や新曲「Week Without You」でのスタイリングには恐れ入りました。どちらもただギターを弾いているだけではないのです。  ナンシー・シナトラの曲ならば、足首に向かって細くなる真っ赤なロングブーツを際立たせるためのギターだし、「Week Without You」ではスリットからのぞく長い脚とのコントラストが鮮烈な白いグレッチ(記事冒頭の写真)。こちらは少し小さめのボディなので、よりアクセサリーとしての意味合いが強くなりますね。
 いずれにせよ、悪目立ちでもなんでもすればいいと暴れていたかつてのマイリーの姿はもうありません。楽曲、演出、衣装、立ち居振る舞い。すべてが全体の中の一部として機能している。  このような統一感は、マリファナ時代のマイリーではあり得なかったでしょう。もっとも、あまりにも落ち着いてしまって退屈だと感じる人もいるかもしれません。  でも、繰り返し楽しめる娯楽って、毎日のおかずみたいなものなんですよね。面白くもなんともないけど、心が落ち着く味がする。いまのマイリー・サイラスは、そのつまらないことと正面から向き合っているのだと思うのです。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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