Lifestyle

加藤はいねの「女の塊」第3回 結婚するとかしないとか

 テレビが壊れてまして。うちの唯一無二のブラウン管テレビが3月の始めに壊れまして。ええ、あのでかくて分厚いことで有名なブラウンが。
 ほんと1ミリたりとも地デジに手を染めてなかったわけですが、なんていうか、デジアナ?っていうの? 一杯のかけそばみたいな感じで電波をもらってたんすけど。「俺がここで何とかするから、今のうちに早く!」みたいな表示も出てたわけですが。
 そのテレビが満を持して壊れました。

 だから、もう全然知らなかったんですけど、1か月くらい前に堤真一が結婚してました。
 半月くらい前に堺雅人も結婚してました。
 堤真一にいたっては、32歳の一般人と結婚してました。

 もうね、32歳の一般人といえば、私なわけです。
 私がどんだけ32歳で一般人かっていったら、もう右に出るものはいないくらいの32歳だし一般人なわけです。
 たとえば一般人度合いでいけば、生まれながらにして、いやもう、先祖代々一般人だし。一般人の末裔だし。
 あと、32歳としても今月でちょうど6か月目で、ようやく32歳が板についてきて、一番アブラがのった状態の32歳なわけです。

 堺雅人は、まあ「大奥」をきっかけにして結婚に至ったわけですが。
 もうね、もっと奥見た?って聞きたい。
 大奥っていうくらいだから、だいぶ奥の方まで来たと思うんですけど、菅野さんが居たとこはね、言っとくけどそれでもだいぶ手前の方だから。もっと奥あるから。菅野さんのいた3kmくらい大奥に、私とか多分いたから。うじゃうじゃいたから。

 でも、私とは結婚しないわけです。

 今日の今日まで、たくさんの男性とすれ違ってきました。
 コンビニではお釣りを返すと共に、強く手を握られたこともありますし、何度もありますし、美容院なんかでは、髪を洗うなんつー甘い言葉でもって、もう何度(椅子ごと)押し倒されたかわかりません。
 でも何人たりとも私とは結婚したりはしないわけです。

 そしたら、最近結婚を決めた友達が「別に運命とかじゃなくてね。まあ何となく、この人とだったらやっていけそうだなって思って」と、結婚に至った決意を述べてました。で、他の友達もワオーって感じになったのね。
 だから、あら奇遇ですね独身の私も近頃同じことを思ったわけでと、「私も。私も。何となく、こんな感じでやっていけそうだなって思ってー」つったら全員苦虫噛みつぶしたような顔になったわけ。みんなの食べてるケーキの中に、突如苦虫入ってたような顔になっちゃうわけ。店員さーん、友達のケーキん中、苦虫入ってたんですけどー。

 同じことを言ったつもりだったんですけど。
 独身というのは、借りの住み家みたいなもんで、仮初めの姿みたいなもんで、いつまで行ってもまだ道の途中みたいなところがあって、ここを永住の地と決めたとしても、まるでどっかの樹海で迷ってる人のように、要救助者であり、出て来なければ来ないで立てこもり犯のように、外から拡声器で説得されて、実家のお母さんまで引っ張りだされて、近所では「そんなことするような子だと思わなかった」とか何とか。そういうところがある。独身の風当たりきついわー。

 と、思ってたんですけどね、最近、独身貴族から子持ちに華麗にジョブチェンジした友達がいまして、そのコがあまりに安易に「あんた結婚しないの?」と聞くもんだから、もー夏目漱石の「こころ」でも出来上がっちゃうんじゃないかっつー勢いで、いっそ火でもつくんじゃないかってくらい思いを述べたんですけど、友達は子どもに離乳食を食べさせながら、いや子どもよりそれ大半が前掛けが食べてない?ってくらい食べさせながら「そっか……」って神妙な顔でうんうん頷いて、そして「で、何で樹海に堤真一が入ったの?」つった。1ミリも話聞いてなかった。いや、かろうじて1ミリくらいは聞いてた。私が時間をかけて練り上げ盛大に演説した「こころ」は離乳食と共に子どもの前掛けに落ち「ところどころ」みたくなって堤真一と樹海だけが命からがら彼女の中に残った。

 おのずと「子育て大変だね」って言葉が舞い降りた。ポロリと口に出てた。すると今度は友達の方がアクセル全開で「坊ちゃん」でも出来上がりそうな勢いをもって、なんかもうそれ呪文かお経かっつーくらいに述べてきたので、どうにか持ちこたえるために「いや、でも、何だかんだ言ってかわいいしね」みたいなまとめを述べると、むしろ薪をくべたみたいに彼女はますます燃え上がり「それから」とばかりに話を続けた。

 結婚する不幸、結婚しない不幸。
 まるで「金の斧、銀の斧」のように日々、私たちの前に突きつけられて、それを必死に嘘をつかないように「銅の斧……銅の斧……」と唱え続け、女神に褒められ3つの斧をもらったところで何だっつー話。結局、重いし持って帰れないし、木こりとしては、正直、仕事がしやすければどの斧でもいい。あと、わざわざ斧を仕込んでまで、あんなこと言ってくる女神、絶対友達いないし。
 そう言って微笑み合い、お茶を飲みきって、席を立とうとしたところで、友達が言った。

加藤はいね,結婚 「じゃあさー『今おまえが落としたのは、この堤真一か、それとも堺雅人か』って言われたらどうする?」

 そっから5時間、話した。結局、私たちはどこにいても、迷うのが楽しくて仕方がないのだ。

<TEXT, ILLUSTRATION/加藤はいね>

【加藤はいね】
32歳。救命救急病棟勤務の看護師。プライベートはツンドラ。24歳のときに立ち上げたブログが、その文体、内容ともに喪女のみならず多くの人の支持を集めて一躍知る人ぞ知るブロガーに。現在執筆中のブログは、『私の時代は終わった』『エロマンティック』




あなたにおすすめ