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SNS上の論争はなぜ気持ち悪いのか。逆上する、有名人に媚びる…

批判される→逆上する→フォロワーがおだてる

 たとえば、あるミュージシャンの作品が批判されると、まず当人が批評そのものを受け付けない態度を取る。すると、彼のフォロワーがそうした姿勢をカッコいいとか言ってヨイショするので、ミュージシャンは勇気づけられる。そうして互いの傷を舐め合う連帯が出来上がる。  このような“弱者の帝国”=掃き溜めが、SNSの出現によって実体として見えやすくなったのが現代だというわけ。 胴上げ 優光氏がツイッターをしていて驚いたのが、 <「他者を批判することは良くないことである」という考えが広い範囲に浸透しているということ>(第一章 SNSは気持ち悪い p.14)だったそう。  自分が傷つきたくないから、まず他者を傷つけないように振る舞う。これも弱者のメンタリティなのでしょう。  本書ではSNS全盛時代の象徴として、稚拙(ちせつ)なご意見番・松本人志(54)や、デマばかり垂れ流し続ける作家の百田尚樹氏(61)などが論じられているのですが、彼らに共通しているのは、自分だけの価値観とそれを支持する人たちのなかでしか成立しない言説だという点なのだと思います。  松本人志も百田氏も一見すると威勢がよく強そうに見えますが、でもどこか危なっかしい思いで見ている人もいるんじゃないでしょうか?  それは彼らが言いたいことを自分ただ一人の責任において述べているからではなく、群れをなす弱者に守られたナルシシズムに甘えて発せられているからだろうと思うのです。  だから本書のタイトルには「権力に忠実なバカ」との文言が入っているのでしょう。 『暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』(慶應義塾大学出版会刊 著 ティモシー・スナイダー 訳 池田年穂)とあわせて読みたい一冊です。 <TEXT/石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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