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広瀬すず主演『anone』初回視聴率9.2%でも、その濃さに圧倒された

 広瀬すず主演、『東京ラブストーリー』『カルテット』の坂元裕二脚本ということでこの冬注目のドラマのひとつである『anone』(日本テレビ系、水曜夜10時)。第1話の視聴率は9.2%でしたが、数字以上に中身の濃い内容でした。
anone

画像は公式サイトより

 まず目を引いたのが、ドラマが開始されておよそ8分間、主人公であるハリカ(広瀬)がまったく姿を見せない、という演出です。  単純に考えれば、誰もが主演である彼女の姿を一番最初に見たいところですが、予想を裏切ってファーストシーンはカレーショップの店長・持本(阿部サダヲ)が震える手でフリスクを取り出し(しかもうまく出せない)、病院で担当医から「止まない雨はありません」と陳腐な名言を添えられ余命宣告される場面でした。  その後も、持本の店を訪れた自殺願望のある謎の女性・るい子(小林聡美)、ドラマのタイトルと同じく「あのね」と読む亜乃音(田中裕子)が登場するも、なかなかハリカは出てきません。そうしているうちにタイトルバックが流れ、ようやくハリカが出てきたと思ったら後ろ姿(!)という念の入れよう。  このこだわりぶりに「この作品は単なる“広瀬すず主演ドラマ”ではない」という坂元さんおよびスタッフの気合いと覚悟が感じられました。 http://youtu.be/50G9SvYefOE

謎だらけのストーリーに多彩な登場人物たち

 ドラマでハリカが働いているのは、いわゆる特殊清掃業。アパートなどで孤独死した住人の部屋の清掃および遺品整理などをする仕事です。余談ですが、第1話でハリカが清掃する部屋で手に取った雑誌は、『SPA!』を精巧に模した『SPY!』でした。  幼少期に親から更生施設に預けられ、現在はネットカフェで生活しているハリカは、ふとしたことから施設の跡を訪れ、かつて体験した忌まわしい虐待の記憶を脳内で美化して上書きし、封印していたことを思い出します。そしてスマホのチャットだけでつながっていたカノン(清水尋也)が自分と同じ施設で育った少年・彦星であることに気づくのです。  これだけでも先が楽しみなミステリー要素満載な感じですが、最後の最後にゲーセンで両替機から戻ってきた1万円札を無表情で破く謎の男・中世古(瑛太)が現れ、視聴者にさらなる謎を残して第1話は終わります。  おそらく2話以降、この1万円札をめぐり、ハリカをはじめとする登場人物たちが複雑に入り乱れていくと思われますが、坂元脚本の妙味と相俟って、どのような結末が待っているのか、予想することはまったくできません。
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最後まで腰を据えて見届けたい作品
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