浮気の言い訳がアホすぎる夫たち 「ゆ、雪女がいてさ…」
「妻に疑われていると思ったとき、男たちはとっさに妙な言い訳をすることがある」と語ってくださったのは、不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さん。
前回に引き続き、浮気を疑われた男性たちのヘンな言い訳、第二弾です。(以下、亀山さんの寄稿)
ある雪の日、ミチヨさん(44歳)の夫は「電車が止まるかもしれないけど、なんとか帰るから」と連絡をしてきた。それが午後8時。ミチヨさんも交通情報を気にしていたが、夫が通勤に使っている電車が止まった様子はない。ところが夫は帰ってこない。
明け方5時頃、玄関がそうっと開き、夫が足音を忍ばせて家の中に入ってくるのがわかった。ミチヨさんは夫の前にぬっと立ち、「何してたの!」と一喝。夫はとっさのことに腰砕けになってその場に座り込んでしまった。
「そのとき夫がなんて言ったと思います?『ゆ、雪女にナンパされて』って。駅への道を歩いていたら雪女にナンパされ、断ったら冷たい手で顔をびたびた叩かれて草むらに連れ込まれたんですって。『あんたは雪女と関係をもったわけ?』と聞いたら、『怖くてそのまま気を失っていた』って。朝まで気を失っていたら死ぬわって言ってやりました」
本当はおそらく帰るのがめんどうになって風俗にでも行ったか、あるいは誰か女性とホテルへでもしけこんだのはないかとミチヨさんは言う。
「考えに考えたあげくの言い訳が雪女のナンパかと思うと、なんだか情けなくて怒る気にもなれませんでした」
とはいえ、ミチヨさんと夫の仲は悪いわけではないというのだから夫婦はわからない。気が小さいくせに浮気をする夫だというが、女性から見てどこか憎めないタイプなのかもしれない。
関係があるかないかはわからないが、夫に好きな女性がいるらしいと気づいたノリコさん(39歳)。高校時代からつきあってそのまま結婚、長いつきあいだけあって、夫の言動から「心ここにあらず」のときは誰か好きな女性がいるときだと知っているのだそう。
「中学生の息子もいるのだから、もうちょっとしっかりしてほしいんだけど、いつまでたっても高校時代のままで……。お酒が好きだから、ときどき飲み明かすことがあるのはわかっているんですが、先日は明け方、ズボンを汚して帰ってきたんですよ。
どうしたのと聞いたら、『酔っ払ってトイレに間に合わず、道ばたでしようとしたら側溝に腰まではまって朝まで身動きとれなかった』と。どこの側溝よと聞いたら、えっと言葉に詰まったあげく、『ノリコの知らない側溝だよ!』と逆ギレ。
『はまって動けなかったのにどうやって帰ってきたわけ?』『知らない人が助けてくれたんだよ』『腰まではまってたわりには、ズボンの裾しか汚れてないじゃん』『そこはほら、オレは運動神経がいいから』って、意味不明な言い訳」
ノリコさんの見立てでは、好きな女性とふたりきりで飲んだあげく、ホテルに誘い込もうとしてフラれたのではないかということだ。その日から数日間、夫がやけに落ち込んでいたのがその証拠だとノリコさんは言う。
「フラれてもフラれても女性にアプローチしているんじゃないかしら。バカですねえ」と余裕綽々(しゃくしゃく)に見えるノリコさんだが、いざとなれば離婚してもかまわないといつでも思っているからだそう。
「ひとり娘が大好きで超親ばかですから、いざ離婚となったら根こそぎぶんどってやるつもりです。私も働いているから、それでなんとかやっていけると思う」
だがノリコさんは知っているのだ。夫は妻と娘を捨ててまで他の女性に走るような大胆なことはできない、と。だから意味不明な言い訳にツッコミを入れつつ、半分楽しんでいる。「今のところ証拠がない。まあ、私も証拠をことさらに探そうとは思っていませんが」
このあたりの緩い感じが夫を救っているのである。
「雪女に冷たい手で叩かれて、連れ去られた」
「酔って側溝にはまってたんだ……朝まで」
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