裕福な家庭に生まれて愛されて育ち、人並み以上の容姿にも恵まれた。さらに馬術や歌の才能もある。そこからの選択肢はたくさんあったはずだ。歌を究めていくこともできただろうし、ミュージカルの道をもっと深く進んでもよかった。恋愛だって、一般的には選び放題だろうと想像できる。

華原朋美 『ALL TIME SELECTION BEST(初回限定盤・DVD付) 』(2015年 Universal Music)
ところが彼女は
男に、そしておそらく自分自身の恋愛感情に振り回されてしまうのである。ここからは想像だが、純粋で、つきあう男によって自分の色を簡単に変えてしまうタイプなのかもしれない。だから本来の自分を見失う。見失ってはまた実家や家族のもとで自分を取り戻し、社会に出ていく。その繰り返しなのだ。
もちろん、私は彼女を非難するつもりなどまったくない。むしろ、こういうハラハラタイプの女性は好きである。自分がどうなってもかまわないと思うほど恋愛に、特定の男に没頭できるひとりの女性を羨ましくさえ思う。
愛されて育ったと思われる彼女だが、家族よりもっと強い愛情を男に求めてしまうのではないだろうか。
人によって「お腹がいっぱいになる食べ物の量」が異なるように、愛情の量も違うのかもしれない。
「誰か私を愛して、唯一無二の存在だと言って」
心でそう叫びながら恋愛を繰り返す女性は、実は少なくないのだと思う。ただ、人はどこかで「他人に期待しすぎてもムダ」だということを学ぶ。だから、自分で自分を見放さないように生きていく。最終的に自分とつきあうのは自分しかいないのだから。しかしこういうタイプの女性はあきらめがつかないのだ。愛されることを全身全霊で求めてしまうのだ。仕事の評価より、存在そのものを愛してもらわないと生きていけないのかもしれない。
今回の30歳年上男性との関係が「恋愛」かどうかはわからない。ただ、無条件に愛してくれる男性が、父性を兼ね備えた30歳年上だった、その彼が彼女の落ち着く先だった、ようやく居場所を見つけたと思っている可能性もある。あくまで憶測だが。庇護(ひご)されることを最低条件として生きていくオンナは、周りをハラハラさせる。それもまた華原朋美という人の魅力のひとつにもなっているのかもしれない。
<文/亀山早苗>
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【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数