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しゃべれない息子の笑顔が、人と人をつないでいく<発達障害のリアル>

「この子はすごくいい笑顔をしているから、きっと大丈夫」

 地元のパスタ屋さんで私とみーちゃんとぽんちゃんがご飯を食べているとき、隣の席には50代くらいのご夫婦が座っていた。いつもの通り、ぽんちゃんはそのご夫婦に笑顔を振りまき、遊んでもらい始めるが、その奥さんがぽんちゃんが“みんなと違う”ことに気づいたようだ。  そこで少しぽんちゃんのことを話すと、「この子はすごくいい笑顔をしているから、きっと大丈夫」と言ってくれたのだ。もし、私が少しでも暗い気持ちだったり、トゲトゲした気持ちでいたら、「無責任に大丈夫なんて言うな」と思っていたかもしれない。でも、その時は純粋にとてもありがたくて、嬉しくて、思わず涙目になってしまったのだ。  そんな私をみた旦那さんが、少しおろおろしたあと、私に名刺を渡してくれた。その名刺は、私たちが住む東京から少し離れた千葉の房総半島の方だった。どうやらその日は、知人の家に遊びに来ていたらしい。 「僕たちはこの房総半島に住んでいるんだけど、すごくいいところだから、3人で遊びにおいで」  と声をかけてくれたのだ。まだ出会って10分もたっていないのに! その夜、名刺のアドレスにお礼のメールをし、いつか行く際にはよろしく願いしますとメールをさせていただいた。いまでも、その縁がつながり、年賀状のやり取りが続いている。  こんな幸せな連鎖は、普通に生きていて繰り返すものではない。ぽんちゃんはいつも笑顔で私と、いろんな人たちをつないでくれる。その縁は、とてもあたたかくて、優しくて、一期一会でも、とても大切なもの。  ぽんちゃんは、言葉をもたなくても、私たち家族に幸せを運んでくれる。この子は、そんなハッピーな素質を持っているから大丈夫。そう思うと、ふと心が軽くなった気がした。 <文/吉田可奈 イラスト/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【登場人物の紹介】 登場人物の紹介息子・ぽんちゃん(8歳):天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず小学校では人気者 娘・みいちゃん(10歳):しっかり者でおませな小学5年生。イケメンの判断が非常に厳しい。 ママ:80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。著書に、女子SPA!での過去の連載をまとめた『シングルマザー、家を買う』がある。Twitter(@singlemother_ky) 【ワタナベチヒロ プロフィール】 漫画家、イラストレーター。お金にまつわる役立つ知識をオールマンガで1冊にまとめた著書『お金に泣かされないための100の法則』(ファイナンシャルプランナー山口京子先生が監修)が主婦と生活社より発売中。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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