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妊娠したのに産めない。流産や死産を繰り返す「不育症」とは?

 せっかく赤ちゃんを授かった、なのに出産までたどり着けなかった。こんな悲しい経験をしていませんか。もし一度ではなく、二度以上の流産や死産を経験したのなら、ある病気の存在を疑ってみるべきだと唱える先生がいます。
病院

写真はイメージです(以下同じ)

妊娠するのに出産にはいたらない、流産・死産・新生児死亡を2回以上くり返すなら『不育症』の可能性があります」  このように指摘するのは、国立成育医療研究センター不育診療科診療部長・三井真理先生。不育症の患者さんを数多く診療されています。

「不育症」の患者は、全国で推定2万~3万人

 女性の晩婚化が進むなか(*1)、多くのカップルが不妊治療を行っています(*2)。不妊治療の病院は、妊娠成立までの診療をしてもらえます。ですが、くり返す流産や死産に手をさしのべてくれる医療機関の存在はあまり知られていません。 「『不育症』という言葉自体、世間に登場したのは比較的最近のことです。なので患者さんにも医師にもなじみのある言葉ではありません。また不育症を検査できる医療機関も限られています。ですが年齢の高い低いを抜きに、全国で2万~3万人の患者さんがいると推定されています」(三井先生、以下「」内すべて同)
国立成育医療研究センター

三井先生が診療部長として勤務する、国立成育医療研究センター不育診療科 ※公式HPより https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/fuiku/index.html

 流産や死産という悲しいできごとは、口にするのもはばかられるため、あまり語られることがありません。  また「2人目不妊」という言葉が聞かれます。こちらも不育症と無縁ではありません。 「1人目の子どもは無事出産できても、2人目以降、流産や死産を2回以上繰り返す場合は、不育症が疑われます」

不育症の4つの原因

 では何が不育症の原因となるのでしょうか。富山大学医学薬学研究部産科婦人科学監修の不育症研究(*3)では、次の4つを主な因子として挙げています。 1.血液の凝固異常 血液が固まりやすい体質。血液が固まり、血栓ができると胎盤の末端まで血液が届かなくなり、胎児の発育が妨げられる。結果、流産・死産を起こしやすい 2.内分泌異常 甲状腺などのホルモンの分泌に異常がみられる 3.子宮形態異常 子宮が2つに分かれているなど、子宮の形に異常がある 4.夫婦の染色体異常 受精卵がつくられる際に、染色体の数が多い・少ない・構造の違いなどの異常が起きる 夫婦「多くの不妊クリニックや産院でも血液検査は行われます。ですが血液の固まりやすさなど、不育症をチェックする項目は含まれていないことがほとんどです。なので思い当たる方は専門医に診てもらいましょう」  上記4つのリスク因子がある場合でも100%流産するわけではありません。リスク因子がつかめない「偶発的流産」を起こす人も多いそうです。 「不妊=妊娠ができないことは、世の中に知れ渡っています。ですが妊娠できるけれども『妊娠を継続することができない』。そういった病気を知らない人は多いと思うんです。みなさん妊娠反応が陽性となれば経過が順調で・当然、元気な赤ちゃんが生まれて当たり前と思っています。でも妊娠して無事に生まれるまで、いくつもの神秘が積み重なって初めて可能なのです」  三井先生の元には度重なる流産・死産を経験し、様々な想いを抱えている患者さんが全国から来られます。そして一様に、<今まで流産を重ねているけれども、どこに行って何を治療すればいいのかわかりませんでした>とおっしゃるそうです。
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不育症の治療とは?
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