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東大生強制わいせつ事件に着想を得た小説『彼女は頭が悪いから』著者・姫野カオルコが語る“嫌な気持ち”とは…

インターネットというツールは「銃」のようなもの

――事件のあと、美咲は被害者にもかかわらずネットで「勘違い女」などと誹謗中傷にさらされ、さらに傷つけられます。セカンドレイプ、セカンドハラスメントは大きな問題となっています。 姫野:ネットでの中傷は気持ちが悪いし、ものすごく嫌な気持ちになる。ただ、影で人を中傷することで、うっぷんを晴らす人というのは昔から大勢いたのだと思う。でも、インターネットがこの世に表れて、そういう人の格好のエサになりましたね。  アメリカでときどき銃乱射事件が起こりますけど、インターネットというツールは「銃」のようなものだと思います。 ――どこから誰に撃たれているのかわからない 姫野:女の子だってお酒を飲むし、飲んだらワーって楽しくなって、カラオケに行ってノリノリになって、「楽しかった!」と1日が終わる。本当にたまたま。たまたまこういうことも起こってしまうのだと思います。 ――詳しくは語れませんが、物語は最後、ささやかではあるけれどかけがえのない救いがありました。  姫野:最後、登場人物にこう言わせようと思って書いたわけではないのです。取材をして登場人物ができると勝手に動き出すんです。私はそれを観察して、記録する。すごく非科学的ですが、創作について秘密にするための方便でもなんでもなく、本当にそうなんです。  教授についても、書き終わったあと一晩寝て、翌日読み返して、私自身、「よくぞ、言ってくださった」と思いました。 ==========  姫野さんは、「怒りではなく、違和感」を原動力にこの『彼女は頭が悪いから』を書き上げたそうです。  人は(私は)自然体でジャッジする。“たまたま”の偶然にも背景にも思いは至らず無意識に。自分の中にあるそんな身勝手さのピカピカつるつるっぷりを見せつけられたのが、モヤモヤの正体だったのかも。  それは、決して心地のいいものではないけれど、見ぬふりしてはいけないものなのだと思うのです。 <取材・文/鈴木靖子>
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