北海道地震・停電をしのいだ女性に聞く「役に立った意外なモノ&コト」
突然の地震で電気や水道が止まり、通信障害によって誰にも連絡がつかない。そんな状況でひとり家の中にいたら、あなたはどうしますか?
9月6日未明に発生した北海道の胆振地方を震源とする地震。最大震度7、札幌市内でも東区では震度6弱の揺れを観測し、その前日に襲来した台風21号の傷が癒える間もなく、全道が停電に見舞われるというかつてない非常事態に陥りました。
同地震をひとり暮らしのマンションの部屋で体験した高木佐和子さん(仮名・38歳)に、その経験から得た教訓について聞きました。
佐和子さんが住むのは札幌市中心部の、札幌駅からほど近いマンションの6階。地震の後に停電が起きた時、水道の蛇口をひねると水がちょろちょろと出たあと止まってしまったそう。
「うちのマンションは水道管から給水ポンプを経由して各部屋に配水される仕組みになっていたんですが、給水ポンプは停電時には動かないので、停電=断水なんです。
震源に近い厚別区や液状化の起こった清田区は水道管が破損したことで断水しましたが、それ以外の市内の地域では、集合住宅を中心に停電による断水が起きていました」(佐和子さん、以下同じ)
地方都市とはいえ、東京と変わらないほど都会な札幌。ひとり暮らしなら、同じマンション内でもご近所づきあいがないケースがほとんどです。佐和子さんも近所の人とほとんど交流していなかったそう。
「ただ、私は同じフロアの同年代の女性とは廊下で挨拶する関係でした。日が昇ってから食糧でも買い出しにいこうと外を出たら彼女とバッタリ会って、二人で一緒に街に出ました。一人でいるよりだいぶ心強かったです」
近所のスーパーは営業はしていたものの、店の前には行列ができていて、ペットボトルの水や食糧などはほとんど売り切れていたそう。
「彼女は家に水がなかったんですが、私はたっぷりありました。というのも、呑兵衛でして、日々の晩酌の割モノとして、2リットルのペットボトルや500ミリリットルの炭酸水なんかを何本も常備していたんです。彼女に何本かお裾分けしたらすごく感謝されました」
そして、呑兵衛であったことがさらに佐和子さんを助けることに。
「近くによく行く飲食店が何店かあるんですが、そのうちの1店の方が私のFacebookの投稿を見て断水中だと知り、『お水あげるから取りに来なよ』って言ってくれました。
でも、水はかなり重いので、車が必要だなと思って悩んでいたら、ちょうどいいところに、近所の飲み友達がキャンプで使うランタンを車に乗って持ってきてくれたんです。救世主! と思って、送ってもらえないかお願いしたら快くOKしてくれました。さらに6階まで運ぶのも手伝ってくれました。
マンションの向かいのお店も『うちは水出るしビルの鍵も閉めないから、夜トイレや水に困ったら使って』と声をかけてくれました。通信障害でスマホでの連絡がままならないなか、徒歩圏内に助け合える友達がいることのありがたさを実感しました。近所で飲んでいなかったらそんな方々と出会えなかったので、本当に呑兵衛でよかったなと思いました(笑)」
近所の飲み友達に車を出してもらうなど助けを求めた佐和子さん。友達とはいえ、災害時に頼みごとをするのは気が引けると思いますが、その考え方は危険だといいます。
「都会でひとり暮らしなのに遠慮していたら孤立してしまいます。図々しいと思われても、背に腹は変えられません。助けが欲しかったらSNSなどで『●●が必要です』と具体的に呼びかけることも大事です。問題がハッキリしていたら、みんな案外助けてくれますよ」
佐和子さんのマンションは地震が起きた6日の夜には通電。市内の多くの世帯は7日に通電したので、早い方でした。佐和子さんは通電後、今度は自分が助ける番だと、「水やスマホの充電に困っている人はうちに来て」とFacebookで呼びかけ、何人かが彼女の家を訪れたそう。
「いざとなったらあそこに行けばいい、という保険だと思ってもらえたらいいなと思って発信しました。最初は女ひとりだし、呼ぶのは友達だけにしようと思ったんですが、こんな時だから友達の友達くらいまではOKにしました」
地震直後からFacebookで積極的に役立つ情報を発信していた佐和子さん。彼女の助け合いの精神と大らかさが周囲の人にも伝播していったのかもしれません。
最後に、災害時に役立ったアイテムについて教えてくれました。
集合住宅の場合、停電=断水の可能性が
日頃から同じフロアの住人と交流すべし
呑兵衛は意外と災害に強い?
徒歩圏内に知り合いをつくるべし
遠慮したら孤立する
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