母親の呪縛に悩む30代女性。“いい子”を続けたら、子育てが怖くなった…
<“親の離婚”と私――vol.2>
両親の離婚を子どもはどう受け止めるのか――前回は、女性ばかりの環境で育ったことで男性がエイリアン(異星人)のごとく理解できず、結婚観を抱けないという女性の例を紹介しました。
今回は、母親と1対1の関係性が与えた影響について、2人家庭で育ったという今井朋子さん(仮名・30代後半)にお話を伺いました。
――お父さんと3人で暮らしていたときのことは覚えていますか?
「物心ついたときには父がおらず、母と2人の生活しか記憶にありません。ただ、母や親戚からの伝聞で父のことは知っています。母方の祖父が起こした事業の後継ぎ候補として結婚したそうですが、夫婦仲はずっと良くなくて、私が生まれて間もないころ、祖父の会社にある仕事の機器を、父が無断でごっそり持ち出したことが最終的なひと押しになって、離婚に至ったそうです。その後、父は幼稚園から私を連れ去ろうとしたこともあったとか。結婚中も、モラハラで母をずいぶん苦しめていたと聞いています」
――お母さんと2人の暮らしはどんな感じでしたか?
「父親がいないことで『かわいそう』と思われていたのか、母や母の親戚からとにかくかわいがられていました。母においては溺愛レベル。私もそんな母が大好きで、かなり依存していましたね。ただ、母は私を“自分のもの”と感じていたというか、子供の優秀さ度合いをシングルマザーとしての頑張りを測るバロメーターのように思っていた節があったので、私は常にいい娘でいようとしていたように思います」
――では、お母さんとケンカしたこともない?
「小学生くらいまでは完全に“いい子”だったのですが、だんだん10代になって自我が芽生えてくると少しは親離れして、高校時代には進路を決める話し合いでケンカになりました。母は私に祖父の仕事を継いでほしいと思っていたらしく、私が自分の進みたい方向を伝えたら、これまで必死で頑張ってきた教育が報われないのは耐えられないといった感じで怒りました。
結局は私が我を通す形で、卒業と同時に上京しましたが、母は裏切られたような気持ちだったと思います」
――お母さんとの関わり方が影響していると感じる場面はありますか?
「母に依存して育ったので、恋愛を含め、対人関係においても相手に依存しがちです。その上、『ママの気に入る娘でいなきゃいけない』という優等生気質が抜けず、彼のために頑張ったり我慢したりしてしまうから、なめられやすいんですよね。
違うと思ったら話し合うべきだと、頭では分かっているのですが、いい子でいなきゃいけない、嫌われたくない、怒らせちゃいけないなどの思いが先に働いて、言えなくなるんです。
友情にも母と幼い子供のような強い信頼関係を求めてしまいますが、友達には恋愛とはちがって、エゴ丸出しな振る舞いをされることが少なく、また関係性もパワーバランスが全面に出ないことが多いので、私にとっては居心地よく、恋愛より価値が高いです」
――お母さんとの関係性そのままに接してしまうんですね。
「愛情を正しくやり取りすることに慣れていないからか、“ダメな自分もそのまま愛される”というのがしっくりこないんです。そんな人に出会えたら、変われるでしょうか?
ただ、2人家庭で育ったことで人間のデフォルトが女性のため、もともと男性があまり得意ではないんですよね。学校や職場では普通に接しますが、初めは身構えてしまうし、自ら積極的に関わろうとも思えないですね。一方で、一度信頼した相手はどっぷり信じてしまうので、実は冷たい人のエゴイストな本質を見抜けずに振り回されて、病んで髪が抜けたこともありました」
母のために、常にいい娘でいようとした

ダメな自分も愛される感覚がわからない

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