息子が遠方の大学に入学が決まったとき、夫は入学金と授業料は自分が出すと言ってくれた。月々の仕送りもしてくれている。現在、息子は大学院生だ。
「息子が大学院に入るとき、珍しく3人で食事をしました。
夫も私も、『こんな親でごめんね』と息子に謝りましたよ。そういえば、息子は私に、『おとうさんとはどうなってるの?』なんてことを聞いたためしがない。聞いてはいけないと思っていたのかしら」
両親に謝られた
息子は、「みんなそれぞれ好きに生きていけばいいということを親に教わったよ」と笑い飛ばしたという。
ミオさんは、そのときほっとしながらも、「私は自分勝手な女だな」と感じていた。
「ただ、開き直るわけではないけど、私は私で我慢しないで自分の人生を貫いてきてよかったと思う。離婚をしなかったのは夫の判断。それも間違っていたわけではないでしょう、きっと。息子が言うように、
それぞれが好きなように生きてきただけ」
今後も夫婦が同居することはないという。現在もミオさんには恋人がいて、夫にもつかず離れず会っている女性がいるようだ。
「私、自分が結婚生活に向いていないと思っていたけど、夫も実は向いてなかったのかもしれない。
婚姻届という紙1枚でつながっているだけの関係かもしれないけど、今となってはそれが私たちのいちばんいい“距離感”だったんじゃないかなと思います」
これからは年に一度くらい家族3人で集まろうという話にもなっているが、「みんな勝手に生きてるからどうなることか」とミオさんは笑う。
夫婦はいつも一緒にいなければいけないわけではない。そんなふうに考える人たちもいる。
同居していてもいなくても、「家族の絆」をどう考えるかは人それぞれ。家族が密な関係であれば幸せとは限らないのではないだろうか。
<文/亀山早苗>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数