節約を夫から強要されるケースもあります。主婦・Fさんの夫は、Fさんの財布からレシートを抜き出しチェックし、もっと出費をおさえられたはずだと彼女を罵りました。
経済的DVです。
Fさんがいくら節約に努めても、夫は一切認めません。
こんなにがんばっているのに――そう思いながら、Fさんははじめての万引きをしました。

また、夫にギャンブル癖があるなどの理由から節約せざるを得ない状況に追い込まれることも。
専業主婦のGさんの夫には、ギャンブルで作った借金がありました。深刻な額ですが、それでも夫はギャンブルをやめませんでした。
Gさんが1円単位で切り詰めても、夫は3万円、5万円と平気でギャンブルに使ってしまいます。そのうえ夫の母親の介護、息子の結婚式の準備など、家庭関係のタスクがすべてGさんの方にのしかかっていました。
夫とお金のことで口論になるたびにスーパーでちょっとしたお惣菜を盗む。そうすると心がスッと軽くなることにGさんは気づきました。おまけに食費の節約にもつながります。
こうしてみると、彼女たちが万引きをはじめたのは、
節約そのものではなく、その背景にある「夫」がきっかけとなっていることがわかります。さまざまな依存症を治療する現場に長年携わってきて、私は依存症の問題をたどっていくと必ず人間関係に行き当たると考えるようになりました。なかでも多いのが家庭内における家族との人間関係です。
一見、問題なさそうな家庭にも依存症の種あり。なにかきっかけがあれば、芽吹いて、成長していくのです。
【斉藤章佳 プロフィール】
1979年生まれ。精神保健福祉士・社会福祉士/大森榎本クリニック精神保健福祉部長。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにて、アルコール依存症を中心に薬物・ギャンブル・性犯罪・クレプトマニアなどさまざまなアディクション問題に携わる。2016年から現職。専門は加害者臨床。著書に『
男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)など。
<文/斉藤章佳>