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新感覚の傑作ホラーが女性に贈る3つのメッセージ。LGBT、フェミニズム…

3:「女らしさ」から自分を解放すること

『テルマ』より

『テルマ』より

 テルマを遠くから撮ったロングショットと近くから撮ったクローズアップを、交互に繰り返しながら進むストーリー。この不安定なカメラワークには、観る者の心をかき乱し不安に陥れる効果があり、まるでテルマが感じる“心の不安定”と連動しているよう。  その上、美しく孤独なノルウェーの風景にテルマが閉じ込められているように見えるロングショットは、彼女の心が抑圧されているように見えます。おそらく、作中たびたび登場する“鳥”は、抑圧された自分を解放したいという葛藤の象徴なのでしょう(ちなみに、監督によるとこの鳥は、ヒッチコック監督の『鳥』(1963年)へのオマージュなのだとか)。
『テルマ』より

『テルマ』より

 さらに、テルマがプールの水中に閉じ込められて息ができず、のたうち回るシーンがありますが、これも父権社会が決めたジェンダーに苦しむ女性を示唆しているようにもとれます。  話はそれますが、先日、杉田水脈議員が放った“生産性”発言はまさに、“女は産まなければいけない”という役割で女性を縛ったもの。このように、今日でも多くの女性は社会が期待する「女らしさ」にがんじがらめになっているのです。
『テルマ』より

『テルマ』より

 私たちが大人になるときに、絶対に避けて通れないのが「自分とは何者なのか?」という問いかけ。自分自身の答えを見つけたとき、テルマは自分の“力”を自由に操り、より広い世界へと羽ばたくことができるかもしれません。  流れる血の一滴にさえ、たまらない寂寥感が広がる圧巻の映像美で、現代社会における女性のあり方を問題提起し、女の子が大人へと成長するときに避けて通れない心の旅を描いた本作。自分の人生の舵をとるのは親でも社会でもなく自分自身である、ということを改めて気づかせてくれます。 <文/此花さくや> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 (C)PaalAudestad/Motlys
此花わか
映画ジャーナリスト、セクシュアリティ・ジャーナリスト、米ACS認定セックス・エデュケーター。手がけた取材にライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、エディ・レッドメイン、ギレルモ・デル・トロ監督、アン・リー監督など多数。セックス・ポジティブな社会を目指してニュースレター「此花わかのセックスと映画の話」を発信中。墨描きとしても活動中。twitter:@sakuya_kono
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『テルマ』は10月20日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開 配給:ギャガ・プラス
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