このトンカツだが、控えめに言って死ぬほどおいしかった。
肉がすごく柔らかく脂身まで美味い。出来たトンカツはいつも食べている物にくらべかなりの「巨大」で、「食べきれるのか」と思ったが杞憂も良いところで、瞬殺であり家族にも大好評だった。私が作ったものが大好評など、5年に1回ぐらいしかない。そのぐらい豚のポテンシャルがすごい。
その後で、担当から送られてきた、今回のテーマである「藏尾ポーク」に関する資料に目を通したのだが、結論を言うと「これを読んだのが食った後で良かった」だ。

藏尾ポーク公式サイトより http://kuraopork.com/user_data/kuraopork.php
良い物を食った分だけ美味しくなってくださるおピッグ様は尊い
その資料には、藏尾ポークがいかに豚に対しこだわりと愛情をもって飼育しているかがつづられていた。
何と飼料にバームクーヘンを使用しているのだそうだ。明らかに私より良いものを食っている。だが仮に私が同じものを食ってもただの肥満中年になるだけだろう。良い物を食った分だけ美味しくなってくださるおピッグ様は尊い。
他にも、飼育環境は常に清潔、温度管理も常にされており、飲ませる水もマイナスイオン水だという。そして毎日飼育員により1匹1匹体調を管理されているのだ。

蔵尾ポーク公式サイトより http://kuraopork.com/user_data/kuraopork.php
あまりにも豚に愛情を注ぐので藏尾ポークは「どうせ肉にするために育てているのに……」と疑問を持たれることさえあるという。
確かに私のような「食うだけ」の人間は、生き物の命を食っているという感覚が希薄なので、資料に乗っている飼育員の方が子豚を抱いている写真を見ただけで「こ、この子豚ちゃんを……?」と思ってしまう。
だが蔵尾ポークは「だからこそ美味しいと言ってもらえるように育てたい」という信念でやっているという。

蔵尾ポーク公式サイトより http://kuraopork.com/
そしてその通りに私はこの豚肉を「メチャクチャ美味い」と思ったわけである、藏尾ポークが豚に注いだ愛情はメチャクチャ美味い豚肉として我々に届いているのだ。
非常に感銘を受ける話だったのだが、それでも食う前に読まなくて良かった。
トンカツというのは、「IQ2」ぐらいで食べるのが一番美味いからだ。
命をいただいているということを忘れてはならないが、美味いトンカツを目の前にして「これは尊い命……」と神妙なツラをして食べるのは「美味しく食べて欲しい」という藏尾ポークの願いをかえって無下にする結果になってしまっている。
よって、豚肉の背景とか一切考えず、偏差値0.2のままトンカツにし「うめー!」以外語彙が消失した状態で食べきれて本当に幸運だった。
そして食べ終わった今、おピッグ様と、藏尾ポークの方々に改めて感謝である。
<文・イラスト/カレー沢薫>
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