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カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」―博多「通りもん」―

カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」 Vol.1 博多「通りもん」】

通りもん まずこれは「食べ物コラム」である。

 いいテーマだ、得意とも言える。仕事に関しては何が来ても「私で良いならやりますよ」というスタンスだが、それでも「女とは何か」「モテとはなにか」について書いてくれと言われると「何故俺に聞く?」と思う。

 和田アキ子はなぜ芸能人の御意見番ヅラなのか、という話をたまに聞くが、あれは多分聞かれたからだ。意見を求められたから答えているのだ。聞かれたのに答えない方が態度が悪い。

 よって私も、そういうテーマで書けと言われれば書く。何故お前如きが偉そうにそんなことを言うのかと言われると全くその通りで申し訳ないのだが、「書くと原稿料がもらえるからです」としか言いようがない。

テーマは「各地の名産」。人はここまで日和れるのか



 その点、食べ物の話はいい。いくら私でも「お前如きが食い物を食うな光合成しろ」と言われることはないだろう。言われたとしたらこのコラムは、食から光合成日記に変更なわけだが、それでも「誰に許可を取ってそこで光合成したのですか」「あなたの葉緑体は不快です」等言われる恐れはある。

 このようにインターネットは乱世なので、何を書いても怒られる時は怒られる。だが食い物の話はその中でも割とピースフルな話題だと思うし、そもそも食い物の前で揉めるのはあまりよくない。

 なので、できれば、からあげの話の時はニワトリとか、その食い物の原材料だという人以外はあまり怒らないで欲しい。

 食という大雑把なテーマは決まったが、食い物と言っても、フォアグラから、しょうゆをかけたティッシュまで色々あるし、セロハンテープののりだって舐めれば甘い。ゴムだって5分くらい噛み続ければそれはもう食い物だろう。

 あまりにも範囲が広すぎるので、もっと絞ることにした。そして、お互いのメールのレスポンスが遅すぎて1か月ぐらいかかったが、「各地の名産」という、人間はここまで日和れるのかというような、アヘ顔ダブルピースフルなテーマが決定した。

ご当地フードはほぼ知らない。部屋から出ないから



 確かに日本には、「ひよこ」や「白い恋人」のような誰もが知っている有名どころから、クラスでちょっと浮いてる奴んちのババアしか作ってない郷土料理まで、多種多様なローカルフードがある。私はそれのほとんどを食べたことがない。

 何故なら、部屋から出ないからだ。旅行なんてもっての外、仕事で東京に行かなければいけない時でも、空いた時間に有名店に行こうなどとは思わず、出発時刻まで、羽田空港のロビーで二時間ぐらい微動だにしないことなどザラだ。

 また、食べることは好きだが、意外とチャレンジ精神がない。

「食べるのが好き」と言う人間には2タイプいる。新製品や食べ歩きを趣味とする「色々たべてみる派」と、「同じものをエンドレスで食う奴」だ。

 私など完全に後者で、どこのコンビニでも買える、栄養補助食を365日食いながら「趣味は食べることです」と満面の笑みで言っているのだ。

 ピースフルな話題のはずが、どのテーマよりも私の心の闇が浮き彫りになりそうな気がしてきた。

 だがもちろん、それ以外の物を食うと全身痙攣するというわけではなく、出されたり、もらったりしたものは何でも食べるし美味いと思う。

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デブを擬菓子化したら「通りもん」になる

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