100万円の歯が一撃でコナゴナ…固すぎる沖縄の菓子の衝撃/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.32 沖縄県「いちゃがりがり」・「天使のはね」】
今回は、今までで一番有益なことが書かれているのでぜひ読んでいって欲しい。
今回のテーマは沖縄の菓子である。
沖縄には行ったことがない。行きたいとは思っているが自分にとって「行きたいと思いながら死ぬ場所第一位」なことも否(いな)めない。
しかし、そんなあの世より遠い場所である沖縄の菓子が、輸送技術により現地に行くことなく食べられるのはありがたいことである。
そう思いながら、何の説明も見ず、送られてきた菓子をまず、一口食べて見た。
一撃で歯が粉砕。
粉砕は若干オーバーだったが「この菓子やけにジャリジャリする、原材料は「砂」か?」と思ったら、一生懸命粉々になった自分の歯を食っていた、という話である。
だが「歯」というのにも実は語弊(ごへい)があり、正確に言うと「総額100万ぐらいかかったインプラント」が欠けた。つまりこの原稿をどれだけ一生懸命書こうがすでに赤字なのだが、故(ゆえ)に大事なことも書ける。
この沖縄の菓子「いちゃがりがり」は「決して勢いよく食うな」ということだ。人によっては、ダンプカーに、ぶつかり稽古を挑むようなことになってしまう。
食い物を見たら、道に落ちているものでも取りあえず口に運ぶ習性があだになってしまった。
このように「いちゃがりがり」の最大の特徴は「固い」ことである。
名前の由来としては、「いちゃ」は「イカ」のことであり、それをがりがり食うから「いちゃがりがり」だ。
私は歯がブレンドされたことによりジャリジャリになってしまったが、本来はがりがり食べるものなのだ。
見た目はかりんとうのようで、その芯にスルメが入っている。
一口目で歯が砕けたが、それは次の歯科検診まで置いておいて、気を取り直してもう一度挑んでみた。だが「これは一生食べられないのでは」と思った。歯を立てないとなると「舐める」ぐらいしかできないうえ、舐めて柔らかくなるような代物ではないのだ。
謀(はか)らずも「一生なくならない食べ物」を発見してしまったのだが、ずっとこれを舐め続けていたら、いつか餓死するだろう。
意を決して、砕けてない方の歯で慎重に噛んでみたが、どうやらこれは食べるのにコツがあるようだ。
一度上手い具合に歯で割ることができれば、後は結構簡単にかみ砕くことが可能だ。この原理まるでさっき砕けた歯のようである。
歯のことは一旦忘れよう。
味は「良いツマミ」である。凶悪な固さも一度かみ砕いてしまえば、ちょうどいい歯ごたえだ。油で揚げているからか、香ばしく、イカの風味も良い。
だが、一番気になるのはこの「固さ」である。一体何をやったらこんなに固くなるのか。原材料を見ると「小麦粉、するめ、植物油、食塩」と至ってシンプルであり「鉄鉱石」などは入っていない。

沖縄の菓子「いちゃがりがり」は決して勢いよく食うな
「一生なくならない食べ物」を発見してしまった
1
2