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高知県のぼうしパンは本体より「みみ」の方が人気?/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」

カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.33 高知県「ぼうしパン」】 高知県ぼうしパン 今回のテーマ食材は見た瞬間に「ぼうしパンだ」と思った。  その名の通り、帽子型が特徴的な形のパンであり、私も食べたことがある。  しかし「ぼうしパン」には驚かなかったが、ぼうしパンが「高知のご当地パン」だということには驚いた。  そんなバカな、お前は誰でも知っているし、どこのスーパーにでもおるやんけと思ったが、私が知っているのは、ぼうしパンではなく、おそらく過去に山崎製パンが作っていた「メルヘンハット」他「ぼうしパン」の類似品であろう、ということが判明した。

似たような菓子が全国に50種類以上ある「萩の月案件」

 これは「萩の月案件」である。  仙台銘菓「萩の月」には「似たような菓子」が全国に50種類以上あると言われている。
仙台銘菓「萩の月」菓匠三全 Amazon販売ページより

仙台銘菓「萩の月」菓匠三全 Amazon販売ページより

 何かがウケると、絶対に「似たようなもの」が生まれてしまうのだ。  しかし一過性の流行りものなら、本元が廃(すた)れた時点で類似品も消えるが、銘菓のようにオリジナルがずっと残り続けるものは、類似品の歴史も同時に長くなってしまう。  そうなると、その類似品こそがオリジナルと思っている人間も多くなる。私などは萩の月を見ると、地元山口のジェネリック萩の月こと「月でひろった卵」に似ている、と感じてしまうのだ。
山口銘菓「月でひろった卵」あさひ製菓 Yahoo販売ページより

山口銘菓「月でひろった卵」あさひ製菓 Yahoo販売ページより

 よって、山崎製パンの「メルヘンハット」もしくはそれに似た「スイートブール」を知っている者はいるだろうが、おそらくそれの元になったと思われる「元祖ぼうしパン」が存在し、それが高知のご当地パンだと知っている人間は少ないのではないだろうか。

ぼうしパンは「失敗」がきっかけで生まれた

 その元祖「ぼうしパン」だが、誕生したのは昭和30年ごろで、意図的にではなく「失敗」がきっかけで生まれたのだという。  とあるパン工場で、職人がメロンパンを作っていた時、普通メロンパンというのは生地を発酵させる前に、表面のビスケット生地をかけるのだが、その日はビスケット生地をかけ忘れたまま発酵してしまったそうだ。  それに気づき、発酵後の生地にビスケット生地をかけて焼いたところ、ぼうしのような形に焼き上がったのがぼうしパンのはじまりだという。
ぼうしパン

高知まるごとネットより

 このようにぼうしパンはポンコツから生み出されている、ということである。  もちろん、人間だもの、とみつをが言っている通り、うっかりは誰でもある。ビスケット生地をかけ忘れて発酵しちゃうこともあるだろう。しかし、ここで生真面目な人間なら「これは失敗だ売り物にならねえ」と廃棄したり、その時点で上司に報告したりするだろう。
相田 みつを 「にんげんだもの」文化出版局

相田 みつを 「にんげんだもの」文化出版局

 おそらくだが、この職人は「何とかごまかせねえかな」と思ったんじゃないだろうか。 「発酵後にビスケット生地をかけても普通のメロンパンが出来上がって失敗がバレない」方にワンチャンかけたのではないか、少なくとも私がその職人ならそうしたと思う。  その結果、メロンパンにはならなかったが「別の何か良さそうなもの」が爆誕したのである。

この世にボンクラがいなかったら、我々の食生活はもっと貧しかったかも

 このように「人間のうっかりや、だらしなさから生まれた料理」というのは結構存在するのである。特に「忘れて放置していたら、何かできてた」という料理はかなりある。  つまりこの世にボンクラがいなかったら、我々の食生活はもっと貧しかったかもしれないということだ。もっとボンクラに感謝すべきである。  そんなうっかりから生まれたぼうしパンだが、その後試行錯誤の末ビスケット生地ではなくカステラ生地を使った「カステラパン」として売り出された。しかし、何せ形がぼうしなので客から「ぼうしパン」と呼ばれそのまま定着したという。
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「ぼうしパンのみみだけ」の製品も売られている
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