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高知県のぼうしパンは本体より「みみ」の方が人気?/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」

ぼうしのツバ、つまり「みみ」部分がおいしい

すえひろ屋のぼうしぱん(チョコチップ入)楽天市場販売ページより

すえひろ屋のぼうしぱん(チョコチップ入)楽天市場販売ページより

 味は「甘いパン」という言葉がぴったりな、柔らかく素朴な甘さのパンだ。  この嫌いな人がいなさそうな感じは萩の月に通じるものがある。「派手さはないが決して消えない」という感じがする。  そしてぼうしパンには本体のパン部分と、ぼうしのツバ、つまり「みみ」部分がある。パンにかけられたカステラ生地のみが焼かれた部分だ。  この「みみ」こそがぼうしパンの本体という人もおり、私も実も「みみ派」である。  このみみ部分はパン部分に比べサクサクしていておいしいのだ。

「ぼうしパンのみみだけ」の製品も売られている

 しかもこの「みみ派」は少数派ではなく、むしろ「本体派」よりも多いそうで、その「みみ派」のニーズに応えるため「ぼうしパンのみみだけ」の製品も売られているのである。  これはぼうしパンだけではない。山崎製パンのメルヘンハットも「メルヘンハットのみみ」という、みみ部分のみの商品が売られている上、本体の「メルヘンハット」よりもこの「みみ」の方がよく売られている。というか「みみ」しか売ってないことも良くあるので、私は「みみ」の方を先に知り、その後本体があることを知ったという感じだ。
ヤマザキ Mメルヘンハットのみみ

「ヤマザキ Mメルヘンハットのみみ」カッテミル販売ページより

 このように、人間のうっかりから生まれ、その後本体よりも、その副産物の方がウケる、という、その素朴な見た目と味には似つかわしくないドラマがぼうしパンには秘められているのである。 <文・イラスト/カレー沢薫> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
カレー沢薫
かれーざわ・かおる 1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』、コラム集に『負ける技術』『ブスの本懐』『やらない理由』などがある
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