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DV男から逃げる気力を失う人たち。「暴力を愛情と感じてしまう」ケースも

 彼は、一緒に病院に行こうと言った。ルリの考え方は歪んでいる、と。そう言われた彼女は激怒し、彼と連絡を絶った。 「その後も暴力男とばかりつきあっていましたが、4年前にとうとう骨折させられて。幼なじみの女友だちが、泣きながら『もうあんたを見ていられない』と私を女性センターに連れていってくれた。そこから紹介された病院で、ずっとカウンセリングを受けています」 カウンセリング 殴ることは愛情ではない。理屈としてわかっていたことを、彼女は体に染みこませるよう、自分の考え方を変えようとしている。 「全部、理性ではわかっているんです。だけど男性とつきあって暴力をふるわない人だと、私のことを本気で好きなわけではないんだと思ってしまう。小さいころから受けていた暴力を、成長過程で自分に納得させてしまったんでしょうね。だから暴力はいけないとわかっているのに、土壇場になると私を力づくで愛してほしいとなる」  わかっていながら、最後には暴力に頼ってしまうのは、彼女自身が「自分を肯定できないから」だそう。ここから抜け出すのは大変だと彼女は言う。認識していることと実感することの間にギャップがありすぎるのだ。 「いつか穏やかな恋愛をしたい。今は一歩一歩、地道にがんばっていくしかないなと思っています」  この4年間は、特に誰ともつきあっていない。体に傷がない人生は初めてかもしれない、と彼女は少し満足そうな笑みをたたえて自分の腕をさすった。 <文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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