「どうしても会ってほしいと彼が言うんです。会いたくもないけどそこは大人として冷静なところを見せたほうがいいかもと思って
指定された喫茶店に行くと、なんとそこにいたのは私の友だち。既婚者です。前に一度、私と彼と彼女の3人で会ったことがあるんですが、そのときはただの後輩として彼女に紹介したので、彼女は私と彼がつきあっていることをたぶん知らないはず」
彼はユキさんを苦しめたかったのだろう。だからあえて彼女の友だちとつきあい始めたのだ。これにはユキさんの心が砕けた。
「私の前でふたりはベタベタして。私は『子どもが待っているから』とすぐ帰りましたが、彼が追ってきて『彼女、素敵な女性なんだ』って。
『よかったわね。だんなさんにバレたらあなた殺されるわよ』と言ってやりました」
互いに傷つけ合った別れは、彼女の心に今も傷を残している。この春から彼は異動で地方に転勤となった。ようやく少しほっとしたユキさんだが、夫との関係修復はこれからだ。夫がどこまで信じているのかいないのかわからないが、今は子どもの学校の行事について話すなど事務的な会話がほとんどだ。
「若い男にちやほやされていい気になっていたところもあったかもしれない。でも少なくとも私は本気で恋をしたんです。自分の気持ちをずたずたにされたのが悲しい。ま、既婚だから恋なんかしちゃいけないと言われればそれまでだけど、既婚だって人を好きになることはあるんですよ」
最後は自棄になったのか、吐き捨てるような口調でユキさんはそう言った。
<文/亀山早苗>
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