斎藤工『麻雀放浪記2020』を語る 「10年がかりで本当に難産でした」
阿佐田哲也氏の原案小説を、斎藤工さんと白石和彌監督(『孤狼の血』『凶悪』)のコンビで映画化した『麻雀放浪記2020』が公開中です。ピエール瀧の出演シーンもカットせずに公開したことに、心ある人は喝采しました。
斎藤さんは、阿佐田氏の小説と和田誠監督作『麻雀放浪記』(1984)の大ファンで、10年前から再映画化企画に携わってきました。舞台を終戦直後から2020年へと移した本作で、主人公の雀士・坊や哲を演じた斎藤さんに話を聞きました。
――斎藤さんが10年間、携わってきた作品ですが、一般の女性のなかには、『麻雀放浪記2020』についてあまり情報を知らない人もいます。そうした人にはどう紹介したいですか?
斎藤工さん(以下、斉藤):確かに麻雀と聞いた時点で抵抗してしまう人もいると思います。でもそこを超えた人間ドラマになっています。ただそれは、扉を開かないと分からない。外観だけ見ると、麻雀が好きな人のための特殊な映画なのかなと思われてしまうかもしれず、そこがネックですが、知らない世界に飛び込むことは映画の長所だと思うんです。麻雀を介した映画ではあるんですけど、そこにあるのは、非日常の日常に誘う強烈な世界。ぜひ騙されたと思って、扉を叩いてほしいと思います。
――現在の日本映画をけん引している白石監督とのタッグです。どんな監督さんですか?
斎藤:非常にスマートな方です。あれだけの傑作を和田誠さんが撮られて、それをリメイクするということの恐ろしさも、企画側の人間としては感じ続けてきましたが、この台本で白石さんが撮ったら、それはリメイクではなくて、本当にリニューアルになるなと。今回はスマホのカメラで撮影するという新たな挑戦もしています。回転ずしの場面は、たぶん映画史上初めての、回転ずし目線の映像になったかと。寿司の気持ちになれますよ(笑)。
――坊や哲はしたたかさと強さのあるキャラクターかと思います。坊や哲の強さを表現するためにどう気を配りましたか?
斎藤:僕が阿佐田さんの小説を読んで思ったのは、坊や哲の吸収力と順応力の高さです。屈強な敵に出会いながら、彼らの長所をどこか吸収しながら成長していく。決して完全無欠じゃなくて、むしろ弱点だったり、ボディが開かれている状況があって、打たれながら、傷を負いながらもかさぶたのようにそこが分厚くなっていくのが、坊や哲なんじゃないかなと。見た目以上に、そうした精神性の面で坊や哲を演じたつもりです。
――弱さをきちんと強さに変えられる。
斎藤:そうですね。そこが進化ポイントだと思うんです。人の欠点、弱点、弱さが進化に繋がる。相手が強ければ強いほど、進化していくのだと思います。
騙されたと思って扉を叩いて
欠点、弱さこそが進化ポイント

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『麻雀放浪記2020』は全国公開中 配給:東映 オフィシャルサイト