アヤカさんはマナさんの家に行き、マナさんが作ってくれたパスタを食べ、趣味の話に花を咲かせた。
「彼女が作ってくれたシーフードのパスタがものすごくおいしくて。料理上手だし、インテリアのセンスもいいし、話もおもしろい。ふたりでワインを飲んで酔っ払って。本当に楽しかった」

夜も更けてそろそろ帰ろうと思ったとき、マナさんに「
私、アヤカさんが好きなの」と言われた。あのときのマナさんの柔らかい唇が目の前にある。アヤカさんは思わずキスをした。
「
そこからふたりで抱き合って床に転がって……。気づいたら全裸になってた。彼女の愛撫で我を忘れるくらい感じてしまって」
それは、彼とするときよりも快感が強かった。以来、彼女は彼と会うよりマナさんと会う頻度が高くなっていく。
「毎日のように彼女と会っていました。ただ1ヶ月ほどたって彼女が
『アヤカを愛してる。心も体も全部好き』と言われたとき、はっと我に返ったんです。
私はマナちゃんを愛しているわけじゃない、と。恋愛感情があると思っていたけど、彼女が言う“愛してる”とは何かが違う。
私は彼女とどうやって生きていこうとは考えられなかった。彼女は私との将来を考えていたのに……。私は快楽に溺れていただけ」

それに気づいたアヤカさんは、マナさんに正直に打ち明けた。あなたのことは大好きだけど、恋愛感情とは違うと思う、ずっとともに歩んでいくという気持ちにはなれないと。
「マナちゃんは非常に傷ついたと思います。私は申し訳なくて、だけどやっぱり違和感を拭(ぬぐ)い去れなかった」
マナさんが彼にすべてを告げてしまうかもしれないと思った。彼のことも失うかもしれない。それでもしかたがないとアヤカさんは覚悟した。
「ただ、マナちゃんはそのことを彼には言わなかった。最後に『
本当に残念だし悲しいけど、しかたがないね』と言ってくれました。私は友だちでいたかったけど、彼女は恋愛感情が強すぎて友だちにはなれない、と」