「最寄り駅近くで会って妙な噂をされると嫌だから、彼とは3つ先の駅の繁華街で約束していたんです。でも
駅のトイレで着替えたとき、私、何をしているんだろうと思って……。いっそ帰ろうかと思いましたが、やはり彼には会いたかった」
初めてのデートは、いくつになってもドキドキするものなのだろう。年齢を重ねて自身の置かれた環境が複雑になればなるほどユキノさんのように罪悪感も増すから、それが緊張感をふくらませることにもつながる。

「デートは楽しかった。彼と話もはずみました。
それから何度か会って、結婚を前提につきあってほしいと言われたけど、結局、私は新しい生活には踏み出せませんでした」
彼にはホテルにも誘われたが、彼女はそれも受け入れることができなかった。
「
長いこと男性と接触がないと、本当に自信がなくなるんです。自分が女として見られているとは思えなくて。彼がつきあってほしいと言ってきたときも夫の保険金をあてにしているんじゃないか、義父母の家が目当てなんじゃないかと考えてしまう自分がいました。私自身には何の魅力もないはずなのに、私を求めるはずがない、と」
当時、彼女は42歳。ただでさえ
40代になった女性たちは自己評価が下がりやすい。早い人は老眼にもなるし白髪も見つけやすくなる。
「女としての外見」において「前の自分とは違う」と思いがちだ。一方で、他の同世代女性はみんなもっときれいなのに、もっと輝いているのにと比較してしまうこともある。

「彼の愛情を素直に受け入れられなかったんですよね。その後、彼は転勤で越していきました。
今になると、彼を信じて新しい人生を始めてもよかったのにと後悔しています」
彼女は今も義父母と暮らし、パートを続けている。娘は中学生になった。先に希望がたくさんある娘を見ていると、自分だけが変わらない人生を送っているように思えて落ち込むことも多いという。
「
この先、一歩踏み出せるチャンスがあるかどうか」
彼と別れて以来、彼女はまだ誰ともデートをしていない。
<文/亀山早苗>
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